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黒岩彰氏ら輩出の嬬恋高、一般生徒も全国募集へ…スキー・スケート選手限定から拡大

読売新聞 / 2024年11月17日 17時35分

来年度からの改革内容が紹介されたオープンスクール(7月、群馬県立嬬恋高校で)

 生徒数の減少が目立つ群馬県嬬恋村の県立嬬恋高校が、来年度の入学からスキー・スケート選手に限定していた全国募集を一般生徒に拡大する。カリキュラムも改編し、地域と連携した教育や「探究」科目を充実させる。県内の公立高の約半数で今年度の入学者が定員を下回るなど各地で生徒数減少が課題となる中、改革が奏功するか注目されている。(桜木優樹)

スケート名門

 同校で7月に開かれたオープンスクールで中学生25人と保護者に来年度からの改革を説明した桜井大也教諭は、最後にこう強調した。「嬬高が変わり、皆さんも嬬高で変わります」

 同校は、1988年カルガリー五輪銅メダリストの黒岩彰副村長らオリンピアン6人を輩出したスケート名門校。2015年度にスケート選手の全国募集を始め、スキーも加えた今年度は県外から6人が入学した。

 しかし生徒数は減り、10年前は46人いた入学者数は今年度は17人。地元中学生の村外進学も増え、嬬恋中から今年度入学した生徒は5人と10年前の5分の1だった。

二つの改革

 これを受けて、同校は二つの改革に着手した。一つは全国募集の拡大で、財団「地域・教育魅力化プラットフォーム」(松江市)が提供する、全国から公立高校に留学する「地域みらい留学」制度に参画。財団が開く説明会で県外の中学生に学校の魅力をPRする。

 同制度は近年、地方活性化につながると注目され、今年度の参加校は35道県145校に上る。きっかけは島根県立隠岐島前どうぜん高校の成功だ。2008年に全国募集を始めると、生徒数は08年度の89人から18年度は179人と倍増。地元の中学生の進学も増えた。財団の高橋洋平マネジャー(36)は「嬬恋は首都圏から近く地域資源も豊富」と、生徒数増加が期待できるとみる。

 もう一つの改革が、主体的に挑戦する力を育む「探究」科目の拡充だ。「どうすれば村の良さを知ってもらえるか」などの疑問を自由に追究する内容で、来年度の入学者が2、3年生になるときには、現在の4倍の週4時間を割く。

 「地域科学」や「地域数学」など探究の基盤となる科目も新設。浅間山の噴火や村の人口統計といった題材を活用し、地域住民の協力を得ながら学習を進める。

 県から委嘱されて改革について助言する県高校魅力化アドバイザーの阿部剛志さん(47)は「地域の応援があれば探究のテーマが広がり、生徒も入学したくなる」と話す。岩手県立大槌高校では、住民と地域探究を行った結果、主体的に学ぶ生徒が増え、入学者も4年で1・5倍に増加したという。

住まいの確保

 県外の生徒受け入れでカギとなるのが住居の問題だ。

 県内では尾瀬(沼田市)、万場(神流町)の県立高2校も県外募集をしている。尾瀬高は一般家庭などに下宿できる制度があり、直近5年間で計37人が入学した。一方、受け皿が少ない万場高は、県外からの入学者は10年度以降ゼロだ。

 嬬恋高の募集拡大を受けて、嬬恋村は村営住宅を改修して生徒が住めるようにする。事業費約700万円をかけ、工事は年度内に終わる予定だ。村未来創造課は「入学に間に合うよう準備を進めている。安心して来てほしい」としている。

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