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COP29開幕 トランプ復権で脱炭素に暗雲

読売新聞 / 2024年11月14日 5時0分

 地球温暖化を防ぐ枠組みから米国が抜けてしまえば国際協調の機運が失われ、脱炭素の取り組みは後退する。米大統領に復帰するトランプ前大統領には慎重な対応を求めたい。

 国連の気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が、アゼルバイジャンで始まった。

 近年、世界各地で豪雨や猛暑などの異常気象が相次ぎ、地球温暖化の脅威が顕在化している。スペインでは10月、200人以上が死亡する洪水が起きた。

 今後10年間の取り組みが、将来の気温上昇幅を大きく左右する。今回の会議は、途上国への資金支援や、各国の温室効果ガス削減目標の引き上げについて議論し、脱炭素を加速する狙いがある。

 ところが、開幕直前の米大統領選で、温暖化対策に消極的なトランプ氏が勝利し、先行きが一気に不透明になってきた。

 トランプ氏はかねて「気候変動はでっちあげだ」と述べている。1期目では、世界の平均気温上昇幅を産業革命前と比べて1・5度以内に抑えるという「パリ協定」から離脱した。

 バイデン政権で復帰したが、トランプ氏は再び離脱すると表明している。石油や天然ガスの掘削を進める方針も示している。

 米国は、世界第2位の温室効果ガス排出国である。その米国がパリ協定から再び抜ければ、今後、最大の排出国である中国に対し、排出削減や、途上国への資金支援を迫る国際的な圧力が弱まることが強く懸念される。

 ただ、米国内では、市民の環境意識の高まりを背景に、州政府や企業、金融業界などが積極的に脱炭素を進めている。ここで再生可能エネルギーへの転換が遅れれば、米国企業の技術力や競争力も損なわれるのではないか。

 COPでは長年、温室効果ガスを大量に排出してきた先進国と、影響を受けてきた途上国が対立してきた。だが近年は、途上国側にいた中国などの排出量も増えて対策を迫られるようになり、利害の調整が難しくなっている。

 また、米国の指導力が低下し、温暖化対策を主導してきた欧州でも排外主義的な急進右派が台頭したことで、温暖化対策への取り組みの勢いが失われつつある。

 こうした中、日本の役割は大きくなっている。米国や中国が責任を果たすよう説得を続けるとともに、日本自身が2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという政府目標を達成できるよう、努力せねばならない。

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