初の石破・トランプ電話会談はたったの5分、「シンゾー・ドナルド」の蜜月関係再現狙うが
読売新聞 / 2024年11月14日 5時0分
トランプ復権<5>
「しっかり備えてくれ」
7日午前、首相官邸。石破首相は、米大統領選で勝利したトランプ次期大統領との電話会談後、秋葉剛男・国家安全保障局長や防衛、外務、経済産業各省の幹部を次々に呼び込み、指示を飛ばした。
電話会談では、早期にトランプ氏と対面会談を開催する約束を取り付けていた。今月中旬に予定する南米訪問後、トランプ氏の邸宅がある米フロリダ州を訪ねる方向で調整を進めている。
トランプ氏と面識がない首相は、大統領就任前に対面会談を開くことにこだわった。トランプ氏の外交は各国首脳との個人的な関係に左右される傾向が強く、早期に信頼を得る必要があると考えた。
2016年にトランプ氏が初当選した際、当時の安倍首相が米ニューヨークのトランプタワーを訪ね、当選後に初めて会談した外国首脳となったことが、両氏の蜜月関係の礎となった。石破首相もその再現を狙う。
もっとも、トランプ氏は同盟国への厳しい姿勢や予測不能な言動で知られ、見通しが明るいとは言えない。日本政府はトランプ氏の出方に戦々恐々としている。
最大の懸念は、防衛費の増額要求だ。
「(日本の防衛費を)3%程度に引き上げる必要がある」。トランプ氏の前政権時代に米国防次官補代理を務めたエルブリッジ・コルビー氏は9月、「対等な日米関係」を主張する首相が自民党総裁選で勝利すると、X(旧ツイッター)にこう投稿した。
防衛費を巡っては、岸田前政権が、海上保安庁予算など関係費を合わせた安全保障関連費を、国内総生産(GDP)比2%に倍増することを決めたが、トランプ氏が納得しなければ、駐留米軍の撤退をちらつかせ、大幅増を迫ってくる可能性はある。
トランプ氏は多国間の枠組みには否定的で、岸田前首相とバイデン大統領が制度化を目指した日米韓協力などを引き継ぐかは不透明だ。第1次政権で北大西洋条約機構(NATO)脱退をほのめかしたトランプ氏と、アジア版NATO創設を持論とする首相の発想の違いが、日米の足並みの乱れにつながらないか懸念する声もある。
首相とトランプ氏の7日の電話会談は約5分間で、フランスのマクロン大統領の約25分間、韓国の
衆院で与党が過半数割れし、政権基盤は揺らぐ中、内政に追われ、外交に注ぐ余力があるのかという問題もある。自民党幹部は「内憂外患だ。内政で物事を決められず、トランプ氏とも渡り合えない事態もあり得る」と危惧する。
(おわり。この連載はワシントン支局・向井ゆう子、田島大志、田中宏幸、ブリュッセル支局・酒井圭吾、経済部・中村徹也、政治部・上村健太が担当しました)
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