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29人死傷のバス横転、「フェード現象」が原因…運転手が「ブレーキでいつでも止まれる誤認識」

読売新聞 / 2024年11月16日 17時25分

横転した観光バス(2022年10月13日撮影、読売ヘリから)

 2022年に発生した静岡県小山町バス横転事故で、国の事業用自動車事故調査委員会(事故調)は15日、下り坂でフットブレーキを多用したことで制動力を失う「フェード現象」が直接的な原因だとする調査報告書を公表した。運転手(28)が「自己流の危険な運転」を行ったとしたほか、運行会社や営業所の運行管理者による指導が行われていなかったことも事故の一因と指摘した。

運行会社の指導不足も一因

 報告書によると、運転手は21年7月に入社。貸し切りバスの運転を担当してから経験した山岳道路はいずれも勾配が緩く、つづら折りの下り坂になっている事故現場は「過去に経験のない急カーブと急勾配が連続した道路」だったという。バスは時速約93キロまで加速し、カーブを曲がりきれずにのり面に衝突し横転した。

 事故調は、運転手がフェード現象について「人ごとでフットブレーキを踏めばいつでも止まれるという誤認識があった」と指摘。「乗客に乗り心地が良いと思ってもらうためフットブレーキによる減速を選択した」と強調した。

 事故当日、運転手に示された運行指示書には、一般的な注意のみ記載され運行経路の注意点について記載はなかった。別営業所が同じ現場を走行した際の運行指示書には、「急坂&カーブが続くため、走行時は2速もしくはローギヤの低速ギヤにて」などと記載されていたこともあった。

 初めての道路に不安を感じた運転手は出発前、運行管理者に道路の情報を求めていたが、運行管理者は上り坂の注意点のみ伝えていた。報告書は、道路環境の違いや危険性を的確に指示できていなかったとし、「運転技術や知識の向上を図ろうとする職場環境作りに欠けていたことが事故の背景にあった」と指摘した。

 再発防止には、経験の浅い運転手に対し、運行管理者が事前に経路を調べて道路状況や運転要領など必要な情報を詳細に指示し、経験や技量に応じた注意事項や指示を記載した運行指示書を作成することなどを求めた。

 運行会社の美杉観光バス(埼玉県)は15日、読売新聞の取材に「調査報告書に書いてある通りで、二度と事故を起こさないために日々安全運転に努めている」とコメントした。

◆小山町バス横転事故=2022年10月13日、小山町の富士山須走口5合目と麓をつなぐ県道「ふじあざみライン」でツアー客を乗せた観光バスが横転して乗客1人が死亡、28人が重軽傷を負った。運転手の男は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)に問われ、昨年10月に禁錮2年6月の実刑判決が確定。指導・監督を怠ったとして運行管理者が業務上過失致死傷容疑で書類送検され、今年5月に不起訴となった。

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