企業中間決算 「稼ぐ力」を改めて見直したい
読売新聞 / 2024年11月16日 5時0分
上場企業の業績は、コロナ禍後、回復を続けたが、中間決算は自動車産業などで振るわず、4年ぶりに減益だった。企業は「稼ぐ力」を見直し、成長を再加速させてほしい。
東京証券取引所に上場する企業の2024年9月中間決算が、ほぼ出そろった。東証株価指数(TOPIX)を構成する企業のうち、金融と、投資事業収益の変動が大きいソフトバンクグループを除いた約1300社の最終利益の合計は、前年同期比で減少した。
取引先の多い自動車メーカーでは、大手7社のうち、トヨタ自動車やホンダ、日産自動車など5社が減益だったのが懸念材料だ。
米国市場で販売競争が激しくなっている上、電気自動車(EV)が普及する中国市場で、中国企業に後れを取ったことがある。
製造業全体で減益となったのは為替の影響も大きい。現在は、1ドル=155円程度の円安だが、8~9月には、一時、139円台まで円高が進み、海外で稼いだ利益が円換算で目減りしたためだ。
22年春から進んだ円安・ドル高は、輸出企業には追い風となり、過去最高益を更新し続けた。今回の決算内容を点検し、為替だのみではなく、収益力を高める戦略を再考していく契機とすべきだ。
企業の内部留保は12年連続で過去最高で、23年度末に600兆円を超えた。投資や賃上げに十分取り組んでこなかった結果だ。
実質賃金は22年4月から長くマイナスが続き、いまだに安定的にプラスに転じていない。日本経済は、投資と賃上げが主導する成長型経済へと転換していくべき局面にある。企業は、その責務の重さを受け止めてもらいたい。
先行きの不確実性は高まっている。トランプ次期米大統領は、全ての輸入品に一律10~20%の関税を課すなど保護主義的な政策を主張している。政権が発足する来年以降、日本企業が対応を迫られる局面が増える可能性もあろう。
トランプ次期政権は、中国に対し強硬な姿勢で臨む方針だ。日米は、半導体やデジタル分野で連携を深めることが有効な戦略になるのではないか。来日した米半導体大手エヌビディアのトップも、日本企業の協力に期待を示した。
デジタル分野では、日立製作所やNECなど電機大手で、ITやAI(人工知能)関連サービスが伸び、増益の企業が目立つ。
ITや半導体関連の企業は、好業績を生かし、デジタルや半導体のサプライチェーン(供給網)の強化を図ることが大切だ。
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