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フリーランス法 安心して働ける環境を整えよ

読売新聞 / 2024年11月17日 5時0分

 組織に属さずに働くフリーランスを保護する新たな法律が、11月から施行された。多様な働き方が広がる中で、安心して仕事ができる環境を整えていくことが大切だ。

 フリーランスは、ITエンジニアやアニメーター、ライター、通訳などが代表的な職種で、働き方の一つとなっている。

 料理の宅配など、単発で仕事を引き受ける「ギグワーク」と呼ばれるフリーランスも増えている。民間の調査では、2023年にフリーランスを本業とする人は約320万人に上るという。

 ただ、無理な発注やトラブルが生じても泣き寝入りする事例が後を絶たない。仕事を打ち切られることなどを恐れるからだろう。

 公正取引委員会が行った調査によると、フリーランスから、「多くは口約束で、事前に契約書を作るのはまれ」「足元をみた報酬額や条件、休日返上の納期を求められることが多い」といった不満の声が多く寄せられたという。

 買いたたきについては、フリーランスの約7割が「報酬額を一方的に決められたことがある」などと回答していた。

 フリーランスには原則として労働基準法が適用されない。立場の弱い個人が安心して働ける環境整備を進めていかねばならない。

 新たな「フリーランス取引適正化法」は、企業が業務を発注する際に、著しく低い代金しか支払わない買いたたきや、一度決めた報酬の不当な減額を禁じる。

 仕事の内容や報酬額を書面やメールで明示し、60日以内に報酬を支払うことも義務づけた。

 下請法では対象外となっている資本金1000万円以下の中小企業にも新法が適用されるため、多くのフリーランスに恩恵が及ぶだろう。また、発注する企業側には、ハラスメント行為に対する相談体制の整備も求めている。

 フリーランスの立場の弱さは根深い問題だ。公取委は今月に入っても、出版大手「KADOKAWA」が、ライターやカメラマンの報酬を著しく低い額に設定したとして下請法違反を認定した。

 公取委は、新法を踏まえて取引状況の監視を強め、違反行為には厳正に対処してもらいたい。

 新法の認知度の低さも課題である。公取委の調査に、フリーランスの8割弱、企業は半数が、法律の内容を知らないと回答した。

 これではフリーランスを十分に保護できない。公取委は、経済団体などと協力して、周知の徹底を急ぐ必要がある。

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