大津市の保護司殺害、2割が「自宅で面接」などに不安…活動拠点は不便で面接場所の確保に課題
読売新聞 / 2024年11月17日 5時0分
大津市保護司殺害事件の発生から今月下旬で半年となる。罪を犯した人らの立ち直りを支援する現場に与えた影響は大きく、法務省の調査には保護司全体の2割が今後の活動に不安を示した。各地で安全対策の強化が模索されているが、自宅以外の面接場所の確保など課題は多い。(山下真範、広島総局 綾木佑我)
複数人で対応
広島市にある保護司の活動拠点「更生保護サポートセンター」。今月8日、広島保護観察所の保護観察官や保護司らが集まり、保護司の安全対策を話し合っていた。
法務省の有識者検討会が10月に公表した報告書では、事件の再発防止策として、自宅以外の面接場所の確保や担当保護司の複数指名などを促している。
同所企画調整課長の賀中伸彦さん(55)は「予算が増えないと、新たな面接場所の確保が進まない」と懸念し、保護司の女性(70)は「1人で面接をした方が日程を調整しやすいが、複数人での面接など選択肢は多い方がいい」と語った。
同所では事件前、保護司が原則1人で対象者の面接などをしていたが、現在は複数で対応するよう保護司に呼びかけている。事件後、保護司になる予定だった人が、家族の反対を理由に辞退したケースもあり、保護司らの不安を把握するため、対象者について保護観察官と気軽に話し合える関係づくりにも力を入れる。
保護観察官(24)はこれまで以上に保護司と密に連絡を取るようにしているといい、「対象者との相性を見極めるのも観察官の仕事」と話す。
70人が退任意向
全国に約4万7000人いる保護司は、法相が委嘱する非常勤の国家公務員だが、給与は支給されず、実質的には民間のボランティアだ。保護観察付き有罪判決を受けた人らと自宅などで面会し、生活上の悩みや就労などの相談に乗って、立ち直りを支援している。
大津市で事件が起き、保護司らの間には不安が広がった。法務省が事件後、約4万4000人の保護司に聴取した調査では、今年8月末時点で70人が退任の意向を示し、保護司の委嘱手続き中だった19人が辞退。約2割の約9700人が今後の活動に不安を示し、内容としては「自宅での面接」などが多かった。
法務省は、保護司の活動拠点として更生保護サポートセンターを全国で886か所整備している。だが、同省が今年行った調査では、回答した保護司約1万700人の8割近くが面接場所として「利用していない」と答えた。理由として「自宅から遠い」「夜間や土日に利用できない」などが挙げられた。
市側が無償提供
安全な面接場所の確保が課題となる中、カギとなるのが自治体の協力だ。
愛知県安城市の安城保護区保護司会では2020年から、市内8か所の福祉センターを市から無償で借り受けている。市役所には更生保護サポートセンターがあるものの、平日の午前9時から午後4時までしか使えず、郊外から通うには時間もかかる。
そこで同保護司会は、市側に対して福祉センターの利用を打診した。福祉センターは土日や夜間の利用もでき、安全な面接場所として活用されている。
市の担当者は「保護司の方々には市の社会福祉協議会などでお世話になっており、日頃の信頼関係から貸し出しを決めた」と話す。同保護司会の会長で、全国保護司連盟の副理事長も務める石川誠さん(75)は「なり手の確保には、安心して面接ができる場所の確保が不可欠だ」と訴える。
ただ、自治体の協力を得るのは一筋縄ではいかない。名古屋保護観察所は8月から、安城市のように保護司に公共施設を利用させてもらえるよう自治体への協力要請を始めた。これまでに7自治体に依頼したが、いずれも「検討中」とされている。中には「なぜ保護司の団体だけに提供するのか即断できない」という声もあるという。
更生保護制度に詳しい今福章二・中央大客員教授(刑事政策)は「保護司の活動には、対象者の立ち直りにとどまらず、再犯防止によって安全な地域社会につながるという意義がある」と強調。「国は必要な予算を確保し、安全な面接場所を増やしたり、保護司をフォローする保護観察官を増員したり、支援を強化すべきだ」と話している。
◆大津市保護司殺害事件=大津市の保護司新庄博志さん(60)が5月26日、自宅で殺害されているのが発見された。滋賀県警は6月8日、当時保護観察中で新庄さんが担当していた無職飯塚紘平容疑者(35)を殺人容疑で逮捕。大津地検は今月11日まで鑑定留置を行い、勾留期限の18日にも起訴の可否を判断する。
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