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M&Aの仲介 中小企業が安心できる環境に

読売新聞 / 2024年11月18日 5時0分

 中小企業は後継者不足が深刻で、廃業する例が増えている。技術や雇用が失われ、日本経済にとって大きな損失だ。

 事業承継のための有効な手段であるM&A(合併・買収)を、安心して利用できる環境を整えていく必要がある。

 経済産業省は、不適切なM&Aを仲介していた15事業者に対し、再発防止策を講じるように初めて指示した。中小企業が被害を受けるM&Aが問題となる中で、買収側企業の信用情報などを十分に審査しなかったとみられている。

 M&Aの仲介業とは、企業の買い手と売り手を引き合わせて手数料を得るビジネスだ。直接に規制する法律はなく、資格や免許の制度も設けられていないため、新規に参入しやすい。

 コンサルタント会社や金融機関などが手がけてきたが、最近は十分な実務能力がないのに参入する企業があるのは見過ごせない。

 M&Aが増える中、国は2021年に登録制度を設けた。約2800社が登録し、今回、問題になった15事業者も含まれている。

 業界の健全性を促していくために登録制度自体の意義はある。ただ、書面審査が中心で、今回の件は問題のある業者を把握する難しさを浮き彫りにしたと言える。

 実際に、摘発されていないものの、詐欺的で悪質な手口があるという。まず、買収側の企業が、後継者が見つからない中小企業の株式を買い取った上で、現預金などの資産の譲渡も受ける。

 中小企業の経営者は、金融機関から融資を受ける際、個人の資産を担保にして返済を保証するよう求められることが多い。

 この経営者保証は、本来、買収時に解除されるべきものだが、買い手側は、保証を解除しないままに、経営権を握った中小企業を倒産させてしまう。

 この結果、事業を譲渡した中小企業の経営者には、借金だけが残ることになる。ある買い手企業に対し、30社以上が被害を訴えている大規模な事案もあるという。

 まずは、捜査当局には、悪質な買い手側企業の摘発に全力で取り組んでもらいたい。

 中小企業にM&Aを広げ、事業承継を後押しする重要性は一段と増している。問題のある仲介業者が放置されれば、中小企業はM&Aの活用をためらうだろう。

 M&A業界の健全化に向けては、免許や資格の制度化を求める声がある。政府は、事業者の信頼性を確認できる仕組みを構築していくことが求められる。

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