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APEC会議 首脳外交の重責を果たせるか

読売新聞 / 2024年11月18日 5時0分

 超大国のリーダーたちとの会談を、石破首相はひとまず無難にこなしたと言えるだろう。

 だが、国際情勢が激変する中、政権基盤の脆弱ぜいじゃくな首相が、首脳外交の重責を果たし続けられるかは見通せない。

 首相が、ペルーで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議に出席した。

 首相は現地で、中国の習近平国家主席と初めて会談し、日中双方の利益を追求する「戦略的互恵関係」の推進で一致した。

 首相は、中国軍の活動に深刻な懸念を伝えた。中国で日本人を殺傷する事件が相次いでいることを踏まえ、在留邦人の安全確保を求めたほか、日本産水産物の輸入再開を約束した日中合意を早期に実施するよう要請した。

 これに対し習氏は「日本人を含む外国人の安全を確保する」と述べた。水産物の輸入再開については「きちんと実施していく」ことで合意したという。

 来年、米大統領に返り咲くトランプ氏は、米国の産業を守るため、中国製品に高関税をかけることを表明しており、米中対立が深まる可能性が指摘されている。

 習氏が今回、首相の要請に応じるかのような発言をしたのは、日中については距離を縮めておく必要があると判断したのだろう。

 ただ、そうであるなら、安全確保や輸入再開を具体的な行動で示すことが先決だ。今後の中国側の出方に注目したい。

 一方、首相はAPECのスピーチで、ウクライナを侵略するロシアを批判したほか、中東情勢について全ての当事者に自制を求めた。日本が主体的に平和の回復に取り組むことが重要だ。

 首相はまた、日米韓3か国の首脳会談にも臨んだ。3首脳は、安全保障や経済分野での協力を進めるため、「日米韓調整事務局」を新設することで合意した。

 多国間の協力を軽視しがちなトランプ氏に政権交代後も、日米韓の連携が後戻りしないよう、制度化する狙いがある。

 北朝鮮はロシアに兵士を派遣し、その見返りとして、ロシアはミサイル技術を北朝鮮に提供している模様だ。露朝の軍事協力の拡大は、アジアにおける脅威を一段と高めている。

 中国の覇権的な活動への警戒も怠れない。8月には、軍用機が初めて日本領空を侵犯した。

 アジアの安定には、米国の抑止力が欠かせない。この地域への米国の関与をどう維持していくかは重い課題である。

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