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北海道産サツマイモ、生産量が急伸…温暖化で栽培しやすく「甘み増す時期が他県産より早い」

読売新聞 / 2024年11月18日 7時44分

 関東地方や九州地方が主産地のサツマイモが、寒冷地である北海道内でも生産量を伸ばしている。温暖化で栽培しやすい気候になってきたことや、「甘みが増す時期が他県産より早い」という特徴が流通上のメリットになっている。全国シェアで見ると、まだ1%にも満たないが、生産者は新たな高収益作物に育てたいと期待しており、集出荷を担うホクレン農業協同組合連合会も「北海道を全国有数の産地に」と後押しする。

■高収益を期待

 10月中旬、石狩平野にある新篠津村でコメや麦などを生産する男性(45)がトラクターで牽引けんいんする車両を使って畑からサツマイモを掘り起こし、車両に乗り込んだ家族らがミニコンテナ(かご)に収めていた。

 男性が本格的にサツマイモ栽培に取り組み始めたのは一昨年。近年の「焼き芋ブーム」により国内外で需要が高く、定植後に病害虫防除などの管理作業がほとんどいらない利点に着目した。今では村内12戸の農家が加盟する新篠津村農協甘藷かんしょ部会の部会長も務める。

 ただ、主産地の茨城県のような水はけの良い火山灰土壌ではないため、春先に土を細かく砕くなど畑作りの工夫を重ねてきた。

 生育は順調で、今年は2・3ヘクタールの畑で人気品種「シルクスイート」など約50トンを収穫した。男性は「サツマイモは将来的に高収益が期待できる数少ない農作物。味は主産地のレベルに到達できていないが、改良を重ね、安定経営の『武器』にしたい」と意気込む。

■一昨年の3倍

 農林水産省の作物統計調査によると、昨年の全国のサツマイモ生産量は71万5800トン。このうち、鹿児島県が21万5400トン、茨城県が20万200トン、千葉県が9万1300トンで、上位3県で全体の約7割を占める。北海道は1870トン(ホクレンのまとめでは1273トン)で1%にも満たないが、ホクレンによると道内産はここ数年で大きく伸びており、今年の生産量は1907トンと、一昨年の3倍となっている。

 「農業王国」の北海道でサツマイモの栽培が少なかったのは、寒冷地には不向きな作物とされてきたことに加え、収穫後の洗浄、選別、貯蔵といった手間がかかる作業を産地だけで担うのが難しいという事情もあった。

 そのためホクレンでは、協力企業の苫小牧埠頭(苫小牧市)が苫小牧港に昨年整備した、サツマイモの一元集出荷施設(選果場)を活用。生産者には収穫後の負担を極力なくす方式にして生産を勧めている。今年は同村を含む道内一円の25農協から約650トンを集めた。

■「糖化」時期早い

 ホクレンの担当者によると、近年は温暖化の影響で、定植から収穫までの積算温度(毎日の平均気温の合算値)が高くなり、サツマイモに適した気象条件という。

 また、でんぷんが糖に変わって甘みが増す「糖化」が、他県産では収穫後の12月以降に進むのに対して、道産は収穫時の10月頃と早い。昼夜の寒暖差が大きいためとみられる。このため、出荷時期が九州、関東産が本格的に出回る前の「端境期」にあたり、流通上の大きな利点だとしている。

 サツマイモ関連情報を発信する一般社団法人「さつまいもアンバサダー協会」代表理事の橋本亜友樹あゆきさん(46)は「暑い地域では作りにくくなってきており、適地は東北以北だとも言われている。北海道の大規模、効率的な農業が、サツマイモにも生かされ、生産が伸びることを期待している」と話している。

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