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図書館の人が見せてくれた一冊の画集が少女を変えた……秋に読みたい本屋や図書館に行きたくなる本

読売新聞 / 2024年11月25日 15時30分

イラスト・大野八生

本屋や図書館に行きたくなる本

 読書にふさわしい季節になった。先月始まった「秋の読書推進月間」でもあり、本屋や図書館に足を運ぶ子どもも増えているのでは。こんな本屋さんがあれば。そんな図書館だったら行きたい。素敵な出会いが待っている場所を、本の中に探してみた。(近藤孝)

 小手鞠るいさんの絵本『まほうの絵本屋さん いずみとみずうみ』(絵・たかすかずみ、出版ワークス)の主人公は絵本作家の若林湖。子どもの頃に戻ったかのように、心の中に住んでいる泉君と会話をし、将来作家になる夢や物語を書いたことなどを伝えている。

 いつものように空想の世界で遊んでいた湖は、ひみつの森に入り込み、まほうの絵本屋さんへ。店員に薦められて手にした絵本は「いずみとみずうみ」。幼い2人が冒険旅行に出かけるお話を、湖は夢中になって読んでいく。実際に会うことはかなわない湖と泉君を、絵本が引き合わせる。そのようなかけがえのない1冊が見つかる本屋が、実際にあるといい。

 米国の絵本作家、パトリシア・ポラッコさんの自伝的絵本『あこがれの図書館』(訳・福本友美子、さ・え・ら書房)は、図書館が本だけでなく、素晴らしい人との出会いの場にもなることを教えてくれる。

 小学生のパトリシアは、引っ越し先の町で、図書館通いを始める。お気に入りは貸し出し禁止の画集。熱心に画集を眺めている少女に、図書館員のおばさんが、特別室にしまってあった貴重な本を見せてくれる。鳥類の絵で知られる画家、オーデュボンの画集で、パトリシアは絵本作家への道を進むきっかけをつかむ。

 ポラッコさんはあとがきに、「図書館の本の中から、美しいものをおしみなく見せてくれたあのたったひとつの行いが、わたしの芸術家としての、そして著者、アマチュア鳥類学者としての将来を保証してくれた」と賛辞を書いている。図書館勤務の経験がある福本さんもあとがきで、「図書館員としてのこの誠実な仕事ぶりに、大きな拍手を送りたい」とつづっている。

懐かしい本屋の1日

 最後の本は、子どもも大人も、町の本屋を愛するすべての人に薦めたい。吉田亮人さんの写真と矢萩多聞さんの文による『はたらく本屋』(創元社)は、仕事の現場をモノクロ写真で見せる「写真絵本 はたらく」シリーズの1冊。大阪の阪急水無瀬駅前にある長谷川書店の1日を撮った写真は、小さい本屋の懐かしいたたずまいを活写する。

 発売日に雑誌を買いに来る常連客、漫画や算数ドリルを買う子どもたち、忙しい合間を縫ってレジの前で昼食をとる店の人……。閉店する町の本屋が増える中、まさにどっこい生きてるといった風情が頼もしい。

 「カリスマ店長がいたり、特殊な選書をしたりする本屋でなく、長谷川書店はもう少し普遍的な本屋さん。僕らが本屋はこうであるといいなと思うことをギュッと詰め込んだような店です」。矢萩さんは朗らかに話す。同シリーズでは、刊行されたばかりの『はたらく図書館』で奈良県立図書情報館を取りあげ、カウンターを離れて、利用者と触れあいたいと提案するスタッフの姿などを紹介している。

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