「デジタル事業の新ブランド・ブルーステラ、顧客へのアピールだけでなく社内の理解が相当深まった」…NEC・森田隆之社長
読売新聞 / 2024年11月18日 16時57分
NECの森田隆之社長が東京都内で、読売新聞などのインタビューに応じた。航空・宇宙・防衛事業の担当者を増員する方針を明らかにしたほか、先端半導体の量産を目指すラピダスへの追加出資検討に前向きな姿勢も示した。(聞き手・村瀬駿太郎)
人材の取り合い競争激しく
――デジタル関連事業の新ブランド「ブルーステラ」の手応えは。
「ブランドをつくることがこれほど大きなインパクトになるとは思わず、うれしい驚きだった。顧客へのアピールもあるが、社内への影響が大きく、ビジネスモデルについての理解が相当深まった。
ITサービスと社会インフラ、ブルーステラ。事業分野をわかりやすくして、NECが何をやっているのか、一言で語れるようにした。マーケットとの信頼関係は重要なので、できるだけ外に発信することを心がけている」
――人員の再配置について。
「ますます異業種間で人材の取り合い競争は激しくなっている。(当社の事業分野の競合は)外資系企業も多い。DX(デジタルトランスフォーメーション)の人材は、金融機関やほかの製造業など、様々な業種が必要としている。キャリアは自分で作ろうという若い人も増えている。社員の向上心ややる気に応え、報酬を含む魅力的な職場を作ることは必要だ」
――AI(人工知能)事業では、かなりの電力を消費する。
「AIを最適化するアーキテクチャー(設計)の検討が、新興企業を含めて進んでいる。消費電力が5分の1になるといった例もある。米エヌビディアを中心に、今後もGPU(画像処理半導体)の普及は進むと思う。データセンターもこれまでと処理の頻度が異なり、電力消費量が多くなる。電力は大きな問題になると考えており、何らかの施策を打たないと、国際的な競争で不利になる」
――生成AIの強みと特化する分野を。
「様々な会社が生成AIに取り組んでいる。当社はゼロから生成AIを作っている。3年ぐらい前に、研究開発のために、GPUの能力が高い機器をそろえた。それが自由に使えるようになったことが、競争優位を保てている理由の一つだ。
どのように生成AIが作られ、進化させるのかについて、深い理解に基づく事業の展開ができるようになった。業務や業種に特化した様々なアプリケーションの領域に合わせた提供をしていきたい」
防衛事業人員、足元でも逼迫感
――防衛事業の現状と見通しについて。
「1、2年で次元が変わった。(3年間で1200人増員する計画を進めているが)足元でも
その意味では、日本が防衛力を含めて自分たちでしっかり国を守っていくことに関し、投資をして力を注ぐというトレンドは必要になる。当社が手がけているサイバーや電磁波、宇宙の領域での先進技術は経済安全保障の観点でも重要だ。
量子暗号のようなものも含めて、日本が世界でリードできる技術を確保することは自国を守る上でも重要だし、平和にも貢献できる。伸ばしていきたい」
――賃上げの考えは。
「モノの値段も上がっており、実質的な賃上げで応えていくのは企業の責務だと思う。それ以上に労働市場は流動化していく。マーケットに基づく報酬体系を実現しなければ、競争力を失う。会社で一律というよりも、職務や業務内容に基づき、資源配分していくことになる。全体としてみれば、魅力的な賃上げで応えていきたい」
ラピダス追加出資検討も
――ラピダスへの出資に対する考え方を。
「当社は過去に半導体事業を切り離した歴史がある。一方、現在は当社も先端領域の半導体を設計し、TSMC(台湾積体電路製造)などに生産を委託する依存構造にある。設計でも米エヌビディアやブロードコムに依存しており、競争力が足りない。
コロナでは当社も(半導体不足で)苦しんだが、今も供給網にはリスクがある。日本でラピダスのような少量多品種の半導体で設計、サポートも含めて実現するのは、ユーザーとして歓迎できる。この話を聞いた時に、ユーザーとして支援したいと思い、最初の出資に応じた。その立場は変わっていない。(追加出資の)要請があれば、その立場で考えたい」
――日本航空電子工業の持ち株売却、NECネッツエスアイの完全子会社化で、事業再編は一区切りついたか。
「上場子会社についていえば、2社とNECキャピタルソリューション(の持ち株売却)で、大きな方向性はついた。コアの事業として進めていく会社は100%出資でグループに取り込める。きちんとグループの力を出せるように、ジョブ型雇用などを進めていきたい」
――M&A(企業の合併・買収)の方針は。
「ブルーテスラの領域では、グローバルを対象にしないといけない。デジタルガバメント、デジタルファイナンスの買収などは、顧客ごとに買収することになる。技術の取得は、自社で開発する方がいいのか、買ってきた方がいいのかを選択することになる。
巨大な買収をするというよりは、新興企業を含めて、研究開発の一環としてM&Aを考えていきたい。優先順位は高くない。まずは提携でできないかを考えたい」
◆森田隆之氏(もりた・たかゆき) 1983年東大法卒、入社。米国勤務を含め海外部門が長く、海外事業責任者として、企業の合併・買収(M&A)の立案を数多く手がけた。副社長兼最高財務責任者(CFO)を経て、2021年4月から社長。大阪府出身。
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