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多発する銅線ケーブル盗、「金属くず」の不正買い取り横行か…警視庁などが業者4社を一斉捜索

読売新聞 / 2024年11月18日 22時33分

盗まれた銅線ケーブルを買い取った疑いのある会社に捜索に入る捜査員ら(18日、栃木県小山市で)=杉本昌大撮影

 太陽光発電施設から盗まれた銅線ケーブルを違法に買い取った疑いが強まったとして、警視庁などは18日、栃木、茨城両県の金属くず買い取り業者4社を盗品等有償譲り受け容疑で一斉捜索した。金属価格の高騰を受け、ケーブル盗の被害は昨年、100億円に上った。警察当局は不正な買い取りの横行が背景にあるとみて、違法業者の摘発を強化する。

タイ人の男ら「顔パス」で売却

 栃木県小山市の買い取り業者には午前10時半頃、警視庁の捜査員ら約20人が段ボールを手に次々と入った。敷地内には金属スクラップなどが山積みにされていた。

 捜査関係者によると、警視庁が8~10月に窃盗容疑で逮捕したタイ人の男7人への捜査で、このグループが昨秋以降、関東など1都7県の太陽光発電施設から約100回、銅線ケーブルを盗んだ疑いが浮上。大半が4業者に持ち込まれ、計約4600万円で売却されたことが確認された。

 タイ人の男らは「一般客とは別の場所で売買していた」「盗品と知りながら買ってくれた。顔パスだった」と供述しており、警視庁は各業者からパソコンや納品書などを押収し、取引の実態解明を進める。

金属ケーブル盗の被害額100億超

 警察庁によると、金属盗は2020年から増加。金属ケーブル盗は昨年、8916件に上り、被害額は約109億円だった。このうち太陽光発電施設での被害が5361件で、今年は上半期(1~6月)だけで4161件に達している。

 背景にあるのが金属価格の高騰だ。20年以降、金属のスクラップ価格は上昇傾向で、電気自動車(EV)向けなどで需要が高い銅は、1キロあたり約1131円(昨年平均)と、20年比で約8割高だ。アルミニウムの約185円(同)や鉄の約47円(昨年度平均)と比べて高値で取引されている。

 捜査関係者によると、窃盗団は地図アプリで太陽光発電施設を探し、夜間に侵入して特殊カッターでケーブルを切断する。被害の約9割は茨城、栃木、群馬など関東に集中している。

 今年上半期に摘発された60人の国籍別はカンボジアが最多の28人、日本が21人、タイが5人、ベトナムが4人、ラオスが2人だった。SNSで知り合って関与するケースが目立つという。

買い取り業者への規制「強化を」

 一度使用されたものの買い取りを巡っては、盗品の流通防止のため、古物営業法で業者に取引相手の本人確認が義務づけられている。だが、切断されたケーブルは「金属くず」とみなされ、同法の適用対象外になっている。

 条例で本人確認を義務づける自治体もあるが、18日現在で17道府県にとどまる。条例は、朝鮮戦争(1950~53年)による金属価格の高騰で金属盗が多発したことから制定されたものが多く、沈静化とともに廃止した自治体もある。

 警察庁は7月、都道府県警に摘発の強化を指示。9月には有識者検討会を発足させ、盗品の流通を絶つ法規制のあり方を探っている。

 茨城県内で太陽光発電施設を管理する「つくば電気通信」(土浦市)は約20か所の施設で被害に遭った。同社の担当者は、「買い取り業者への規制を強化しなければ、今後も被害は続くだろう。早急に法整備を進めてほしい」と語った。

銅線ケーブルのアルミ転換が広がる

 金属盗が相次ぐなか、製品の素材を安価のアルミに替える動きが広がっている。昨年、銅線ケーブル計約1万メートル(約1億円)が盗まれた山梨県南アルプス市の太陽光発電施設や、橋から銅と亜鉛の合金銘板19枚(計95万円)が盗まれた静岡県島田市では、代替品にアルミを使った。

 電線大手の「古河電気工業」(東京)によると、アルミの電気伝導率は銅の6割ほどだが、ケーブルのサイズを少し太くすれば、機能に問題はない。同施設からのアルミケーブルの注文は、2020年の数件から、今年は8月末時点で約440件に上った。同社の関連会社の担当者によると、太陽光発電施設では、切断されたアルミケーブルが放置されていたケースもあった。売却しても「金にならない」と放置された可能性がある。(甲府支局 瀬田糸織)

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