GDPプラス 先行きのリスクに備えを急げ
読売新聞 / 2024年11月19日 5時0分
日本経済は緩やかに回復しているが、先行きのリスクが増えてきた。政府は、物価高を上回る賃上げと活発な投資を促していくための具体的な取り組みを急がねばならない。
2024年7~9月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、前期比の年率換算で0・9%増だった。2四半期連続のプラス成長となったが、4~6月期の2・2%増から伸びは鈍化した。
GDPの過半を占める個人消費は前期比0・9%増だった。内需のもう一つの柱である企業の設備投資は0・2%減となった。全体としてプラス成長を維持できたのは、消費の底堅さが大きい。
ただし、一時的な要因が多いことが気がかりだ。
新車販売の回復は、認証不正問題で落ち込んでいた反動の面がある。食品や飲料への支出拡大は、南海トラフ地震臨時情報や台風の影響で買いだめが起きたためという。外食や宿泊は伸び悩んでおり、国民の節約志向は根強い。
この期間は、1人当たり年4万円の定額減税や、電気・ガス料金への補助金が再開された影響で、所得環境は大幅に改善していた。しかし、期待されたほど消費が押し上げられたとは言い難い。
政府は、月内にもまとめる経済対策で、低所得世帯への給付金支給や、電気・ガス料金への補助再開などを検討している。そうしたバラマキ的な政策では、日本経済の成長力は高まりそうにない。
日本は、賃上げと投資が主導する「成長型経済」へと移行するべき重要な局面にある。そうした中、先行きの懸念材料が増えており、備えを急ぐ必要がある。
今回のGDP速報で、輸出は景気が停滞する中国向けが振るわず、前期の2・6%増から0・4%増へと伸びが縮小した。トランプ次期米大統領は高関税を課すと主張しており、輸出は今後、さらに打撃を被る可能性がある。
外需頼みではなく、内需を拡大することが不可欠だ。だが、最近の円安・ドル高は、物価高を助長して家計を苦しめている。
企業が600兆円を超える内部留保を活用せずに抱えていては、物価高を克服する賃上げと投資の好循環は実現しない。大企業が高い賃上げを先導し、中小企業にも恩恵を広げてもらいたい。
政府は、賃上げ優遇税制などの施策をさらに練ってほしい。デジタル化や脱炭素、人手不足を解消する省力化など取り組むべき重要分野は多い。技術革新に向けた投資を後押しすることも大切だ。
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