「無縁遺体」増加 対策を自治体任せでいいのか
読売新聞 / 2024年11月20日 5時0分
亡くなった後、引き取り手のない「無縁遺体」が増加している。高齢化に伴い、今後も増えていくだろう。どう対応すべきか、社会全体で真剣に向き合う時期である。
総務省が昨年公表した初の調査では、2018年4月から21年10月までに、全国で約10万6000人の無縁遺体が確認された。主な自治体を対象に本紙が調べたところ、22年度までの5年間で30%以上も増加している。
独り暮らしの高齢者が増えているのに加え、親族がいても関係が疎遠で、遺体の引き取りを拒否する場合が多いためだという。人と人とのつながりが薄れている現代を象徴する事態だと言える。
独りで亡くなった人の遺体は自治体が親族の連絡先を調べ、引き取りの意向を確認する。親族が見つからなかったり、引き取りを拒否されたりすれば、墓地埋葬法などに基づき自治体が火葬する。
ただ、親族との連絡に手間取ることもあり、自治体の負担は大きい。名古屋市では、無縁遺体が葬儀業者の保冷施設に3年以上も放置されるトラブルがあった。同じような問題は、どこで起きてもおかしくないだろう。
厚生労働省の実態調査では、無縁遺体の具体的な取り扱いを定めたマニュアルを作っている自治体は、全体の1割にすぎなかった。対応によっては親族から苦情を言われることもあり、自治体の多くが苦心している。
連絡すべき親族の範囲や探し方、遺体や遺骨を保管する期間といった具体的な手順について、国は自治体任せにせず、統一的な指針を示すことが必要だ。
まずは国と自治体、医療や介護の関係者、葬儀業者らが情報交換し、課題を洗い出してほしい。
65歳以上の単身世帯は、20年の時点では全世帯の13%だったが、50年には20%を超えると推計されている。無縁遺体の問題は、ますます深刻化する可能性がある。
高齢者自身が生前から、自分の死後に葬儀や遺骨の取り扱いをどうするか、相談できる窓口を設けている自治体もある。
例えば、長野市は「『おひとりさま』あんしんサポート相談室」を開設し、独り暮らしの「終活」を支援している。老後の生活から死後の手続きまで、頼れる親族がいない人の悩みを聞き、アドバイスしているという。
単身者が増え、人間関係も希薄になった今、人生の終幕をどのように迎えるのか、一人ひとりが早めに考えておくことが大切だ。
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