仕事満足度ランキング1位の職種は「財務」 「プロジェクトX」支えた「泥臭い」職種は影を潜め/「doda」編集長・桜井貴史さん
J-CASTニュース / 2024年11月19日 20時16分
満足度が高い職種は?(写真はイメージ)
あなたは自分の仕事にどのくらい満足していますか。今の仕事に満足している人が多い職種は何だろうか。
人材総合サービスのパーソルキャリア運営する転職サービス「doda(デューダ)」が2024年10月28日に発表した「仕事満足度ランキング2024」によると、総合1位は「財務」だという。
「doda」編集長の桜井貴史さんに話を聞いた。
1位の財務は「給与に不満なく、定時に帰れて人間関係も良好」
「doda」の調査は2013年から毎年行っている。20~59歳のビジネスパーソン1万5000人を対象に、現在就いている職種について「総合」「仕事内容」「給与・待遇」「労働時間」「職場環境」の5つの指標別に満足度を100点満点で回答、平均点で算出する【図表】。
仕事満足度ランキング総合1位は「財務」。指標別で見ると「仕事内容」「職場環境」が高く2位、「給与・待遇」は7位。満足度コメントでは、「給与に不満はなく、定時に帰れて人間関係も良好」など、業務内容、給与、人間関係などを総合的に評価する声が多く寄せられた。
2位はモノづくり系エンジニアの「基礎研究/先行開発/要素技術開発」、3位は医療系専門職の「学術/メディカルサイエンスリエゾン」。どちらも専門性の高さや資格を活かせることが高評価のポイント。
トップ20で最も多かったのは「企画/管理」で6職種。次いで「IT/通信系エンジニア」が4職種、「モノづくり系エンジニア」が3職種と続く。【図表】を見ると、聞きなれない職種が上位並ぶ。満足度が高いのはなぜか。
未来を見据えて、企業がこれから使うお金を管理する「財務」
J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった「doda」編集長の桜井貴史さんに話を聞いた。
――1位は「財務」(企画/管理)はどういう点が評価されて、総合満足度1位になったのでしょうか。
桜井貴史さん 企業が事業を行うために必要な資金の調達や資産運用、予算管理に携わる「財務」は、未来を見据えて企業がこれから使うお金を管理する職種です。「ワーク・ライフ・バランスを重視しつつ、やりたい業務に携われている」などのコメントが寄せられ、職場環境や仕事内容への満足度が総合的に高いと感じる個人が多いようです。
――「財務」もそうですが、トップ20で最も多いのが「企画/管理」部門ですね。人気の秘密は何なのでしょうか。
桜井貴史さん たとえば、「法務」では企業経営に携わることができることや裁量の大きさが評価されています。「自分のペースでできることが多く、会社経営に関わる重要な業務ができる」といったコメントが寄せられています。
「企画/マーケティング関連事務アシスタント」では、「出社・在宅といった勤務場所や裁量が個人にあり、自由」などと、働く環境の自由度が大きいことが評価されています。
「営業企画」では、「自分の役割も明確で、会社として人材を育てようとする方向性が見える」などのコメントがあり、人材育成に携われることにやりがいを感じているようです。
IT職種に就く人はもともとITやインターネットが大好き
――一方、「IT/通信系エンジニア」や「モノづくり系エンジニア」も上位に入っていますね。この理由は何でしょうか。
桜井貴史さん 「IT/通信系エンジニア」は「仕事内容」「給与・待遇」の点数が高いです。「システムが完成した時の達成感が大きい」「評価・昇格・昇給のどれも満足している」という声が多いです。また、「職場環境」では「フルリモートで楽だから」など、コロナ禍以降もリモートワークが可能な職場環境を高く評価するコメントも見られました。
「ものづくり系エンジニア」では、「自分のやりたい分野の仕事ができており、スキルも活かせている」「有休が取りやすく、残業が少ない職場なので満足している」など、やりがいや働きやすい環境を評価するコメントがみられました。
――IT関連はいま人気職種になっているのですね。
桜井貴史さん コメント以外から私なりに人気の理由を考察すれば、IT職種に就く方はもともとITやインターネットが大好きなのだと思います。
自己研鑽も楽しみながら取り組める思考の方が多く、そこにやりがいを感じているのでしょう。しかも、業界の将来性があり、転勤リスクも低く、働きやすい環境をかなえられているとなればなおさらです。
――もともと好きなうえに、やりがいまで得られれば最高ですね。
桜井貴史さん 特に今回は、自身の関与した制作物がどのようにユーザーから活用されているか、また、使用した個人からのフィードバックを受けやすい「Webエンジニア」や「社内システムエンジニア」などが上位にきており、やりがいや達成感が満足度に繋がったのではと推測します。
なお、「品質管理」は、サービスの品質が利用者の満足度にも直結することから昨今重要性が高まっています。社会貢献性を感じやすいことが満足度につながっているのではないでしょうか。
「モノづくり系エンジニア」のうち3職種が上位にランクインした理由は、担う業務の技術レベルが年々高まり、企業からの投資も増えている領域なので、やりがいが大きいことが関係していると考えられます。
「不正品質問題」で脚光を浴びる職種が人気に
――なるほど。ところで総合満足度2位の「基礎研究/先行開発/要素技術開発」とはどんな仕事ですか。
桜井貴史さん 10年後、20年後の製品化を視野に入れ、新しい技術や仕組みを研究する仕事です。現在はEV自動車が一般化してきましたが、さらなる進化を目指して製品づくりに関わっている人もいるのではないでしょうか。
将来的に自身が手掛けた製品が世に出ることにワクワクし、やりがいを感じる人が多いのだと思います。ここ数年で中途採用が増えた分野です。求められるスキルや業務内容が明確になっていることも達成感を得やすい一因でしょう。
――「評価・実験・デバック」という、聞きなれない職種が5位にきていますね。
桜井貴史さん これは、設計過程を経た製品の試作品の操作やシミュレーションを繰り返すことで、強度や安全性を担保する仕事です。昨今不正品質問題がニュースで取り上げられる機会が増えており、企業が品質強化のために投資をしている領域です。それだけに、やりがいを感じる人が増えていると考えられます。
18位の「製品企画」は数年後の製品化を見込んで、既存の自社製品のバージョンアップを考える仕事です。技術発展を見据えるとアイデアの幅も広がりやすく、今後求められるものをサーチし、企画構想していくことに楽しみを見出す人も多いのではないでしょうか。
「プロジェクトX」の職種が時代に合わない理由
――ただ、私は70代で昭和のイメージが強いせいか、トップ20をみると、製造現場のモノづくりとか、取引先を一軒一軒回る営業職とか、巨大プロジェクトに挑戦する部門などが見当たらない点は気になります。
かつて日本経済を動かしてきた「泥臭い」職種、たとえばNHK番組「プロジェクトX」のような世界です。いかがでしょうか。
桜井貴史さん もちろん地道に売り上げを積み上げる営業や、大きなプロジェクトを担う仕事にやりがいを感じる方も多くいます。しかし、残業時間の削減が求められる昨今は、自動化できる作業はロボットに置き換え、生産性アップを目指す傾向があります。
他方、営業では商品やサービスの差別化が難しくなっていることから、営業手法を変える、システムの導入などによって営業活動を効率化することにより売り上げアップを狙う動きも広がってきています。
こうした環境の変化もあり、ワーク・ライフ・バランスの整った働きやすい環境で、自身が意義を感じる仕事をすることに、より満足度を感じる個人が増えてきたのかもしれません。
――仕事の満足度を高めるには何が一番重要だと考えますか。
桜井貴史さん 仕事の満足度を高めるうえで重要なことは、自分は日々何を大事にしているのかという、自分のキャリアの軸です。もちろん、すべての項目が満足できればいいのですが、生活の変化や会社・職場の変化で、今は満足していても、それがずっと補償されるわけではありません。
どういう時に自分は満足するのか、またどういうことは譲れないのか、逆に避けたいのかなど、自分自身を理解したうえで、今の仕事を自分が選んでいるという感覚がとても重要だと思います。
――今回の調査で特に強調しておきたいことがありますか。
桜井貴史さん 仕事への満足度が高いと答えた人は、リモートワークやフレックスといった「自由度の高い働き方」や「勤務時間や人間関係」の面で満足している傾向が見られます。
近年では、人々が活き活きと働くためには、身体的・精神的・社会的に満たされた状態である「ウェルビーイング」が重要だという考えが広まりつつあります。やりがいや給与だけでなく、自分らしい仕事や働き方を自分で決めて選ぶ「キャリアオーナーシップ」が今後ますます必要になってくるでしょう。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
【プロフィール】
桜井 貴史(さくらい・たかふみ)
doda編集長
新卒で大手人材会社に入社、一貫して国内外の学生のキャリア教育や就職・転職、幅広い企業の採用支援事業に携わる。
2016年11月、パーソルキャリアに中途入社。新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げを牽引し、初代dodaキャンパス編集長に。大学生向けサービスの責任者を務める。
2024年4月、doda編集長に就任。サービスを通じてこれまで60万人以上の若者のキャリア支援に携わり、Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通している。
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