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「頭脳」手に入れ「常識」備えたかに見えるロボット…私たちのパートナーか、倫理観なき危険な存在か

読売新聞 / 2024年11月20日 5時0分

東京大の河原塚健人・特任助教が見守る中、目玉焼きを作る人型ロボット(9月10日、東京都文京区で)=帖地洸平撮影

[生成AI考]第4部 混乱の先に<3>

 人型ロボットがフライパンの上にバターを投入した。加熱スイッチを押した後、ボウルの中の生卵を流し込むと、ほどなく目玉焼きが出来上がった。

 「ちょっと焦げ気味だけど、良い出来。素晴らしい動きだった」。東京大(東京都文京区)の研究室で行われた調理実験を見守った河原塚健人・東大特任助教は、満足げな表情を浮かべた。

 ロボットには「バターを使って目玉焼きを作る」という簡単な指示しか与えていない。生成AI(人工知能)を導入されたロボットは、バターが溶けた状態や卵の焼け具合などを認識しながら自律的に行動した。

 従来のロボットは、道具の使い方や必要な作業を一つずつ事前に学習させる必要があり、同じ動きを繰り返すだけでも膨大な時間と手間がかかっていた。今回、文字情報や画像だけでなく、動画も学習データとして取り込み、ロボットは様々な行動が可能となった。

 2年前から生成AIロボットの研究に取り組んできた河原塚氏は「ロボット開発の大転換だ。人間が持つ『常識』をロボットが身につけたように感じる」と語る。

 生成AIという「頭脳」を手に入れたロボットへの期待は、産業界を中心に高まっている。2022年に約120億ドル(約1兆9000億円)だったAIロボットの世界市場は、31年には約700億ドル(約11兆円)にまで急拡大するというコンサルタント会社の試算もある。

 接客でもAIを搭載したロボットが活用されようとしている。自動車部品大手デンソーは今年1月、生成AIを取り入れたアーム型ロボットの実証実験を名古屋市の土産物店で行った。売り場に設置されたロボットが客に話しかけ、会話の内容に応じてお酒やお菓子などお薦めの土産物を選び、アームで客に手渡す。

 「仕事帰りですか」「名古屋は初めてですか」。雑談の中から臨機応変に商品を選ぶ様子を見て、同社開発チームの佐藤正健さんは、「接客だけでなく、子供の見守りや介護など幅広く応用できるのでは」と期待する。

 AIロボットは、単なる道具の域を越え、私たちのパートナーとして急速な進化を続けているように見える。いずれ、「ドラえもん」や「鉄腕アトム」のように人間を超越するAIロボットが登場するのだろうか。

 AI研究者の松原仁・京都橘大教授によると、こんな例え話がある。高度な知能を持つAIロボットに、「環境問題を解決せよ」と指示を出す。AIロボットは人間こそが地球を汚したり破壊したりする存在だと判断し、人類を排除するように動き出す――。

 倫理観や善悪の基準を持たないAIは目標達成のために人間に危害を加えてでも成果を求めるかもしれない。松原氏は「AIが常識を備えたように見えても、人間とAIの知能は異なるものだ」と強調する。

 その上で、「AIが我々の生活に入り込む際、どんな状態なら社会として受け入れられるのかなど、十分な検討が欠かせない」と指摘する。

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