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在職期間は全国最長の10期40年、大分・姫島村長が退任へ…父と合わせ「藤本村政」64年超

読売新聞 / 2024年11月20日 14時0分

 周防灘に浮かぶ大分県の離島・姫島村で、村長を10期40年務めた藤本昭夫氏(81)が25日に退任する。在職期間は現職首長として全国最長で、前村長で父の熊雄氏も合わせた「藤本村政」は64年超に及ぶ。役場の仕事を島民で分けあう村独自の施策などが評価され、任期の大半で選挙戦を経験しなかった藤本村長は「無投票もまた民意だ」と自身の政治哲学を語った。(大石健一)

ワークシェア

 「あっという間という感じ。過ぎ去ったら短かった」。今月7日、村長室で読売新聞の取材に応じた藤本村長が振り返った。

 国東半島の北約5キロ・メートルに浮かぶ姫島では約7平方キロ・メートルに約1700人が暮らす。名産の車エビ養殖に代表される水産業が主要産業で、佐藤栄作と田中角栄の両元首相らを支えた西村英一・元自民党副総裁を生んだ地としても知られる。

 藤本村長が、車エビ養殖会社の役員から村のかじ取り役に転じたのは1984年。村長だった父が7期目の途中で急逝したためだ。

 力を入れた施策の一つが、職員の給与を引き下げる代わりに人数を増やすこと。現在の職員数は202人で、村民のおよそ9人に1人が「役人」となる計算だ。雇用の場が限られる島で多くの人が生きるための知恵は、「ワークシェアリング」のさきがけにもなった。

合併離脱

 国東町など4町(現・国東市)との「平成の大合併」協議では、職員のリストラ策を巡って折り合わず、「働く場の維持は多くの村民の願いだ」と離脱を決断した。村の人口は就任時の約3200人からほぼ半減したが、「同規模だったほかの離島は500人くらいになった」と強調し、村の独立を守ったことに誇りもにじませる。

 公共下水道の普及にも努め、98年には整備率100%を達成。電気と水道の敷設に尽くした前村長の業績に触れつつ、「父が『光』と『水』で、私が下水道」と述べ、父子2代で紡いだ行政運営の成果を挙げる。

村二分避け

 藤本村政を支持する島民は多く、7期すべてで無投票だった父に続き、自身も10期中8期で対抗馬が現れなかった。全国町村長会などによると、11期務めた山梨県早川町長(84)が今月15日に引退したことで、藤本村長は任期満了日までの10日間だけ、在任期間が全国トップになるという。

 長期政権には村政の停滞や多選への批判もつきまとうが、藤本村長は選挙で村が分断された過去の歴史も挙げながら、「小さな村だから、告示までに『あの人がふさわしい』と合意ができる。無投票が一番だ」と意に介する様子はない。

 後継に指名され、無投票で次期村長となる元県課長の大海靖治氏(60)は「長年にわたり、村のトップとして本土並みかそれ以上のインフラ整備を手がけてくれた」と評価し、藤本村長の路線を継承する考えだ。40年の節目を機に、年齢や体力面から引退を決めたという藤本村長は「新しい視点で村の将来像を描いてほしい」とエールを送る。

 北九州市立大の南博教授(都市政策)は「10期は長すぎた感もあるが、島を二分する激しい選挙が望まれなかった結果だろう。再び無投票で選ばれた新村長は早速、手腕を問われることになる」と指摘する。

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