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「吃音をからかってごめん」…かつての同級生から届いたメール、「注文に時間がかかるカフェ」奥村安莉沙さんが変わった理由

読売新聞 / 2024年11月22日 10時0分

「注カフェ」で接客に挑戦する吃音の当事者(2023年9月、広島県で)

吃音 ( きつおん ) の悩みを克服し、啓発活動に取り組む奥村安莉沙さん(32)。語学留学で訪れたオーストラリア・メルボルンのカフェで、それまでの価値観を一変させる光景を目の当たりにする。(読売中高生新聞編集室 大前勇)

かなった「子どもの頃からの夢」

 「メルボルンはカフェ文化が深く根付いた街で、たくさんのお店がありました。そのなかに障害のある人や吃音の人が普通に働いているカフェがあったんです。英語がうまく話せない移民の店員もいました。

 言葉でのコミュニケーションが難しくても、ジェスチャーで生き生きと接客していて、お客さんも店員が話せないことなんかまったく気にしていません。私もさっそく、そのお店で働かせてもらうことにしました。諦めていた子どもの頃からの夢が、いとも簡単にかなってしまったんです。自分で勝手に『できない』と思い込んでいただけだったんですね。

 オーストラリアは吃音治療の先進国でもあって、私も会話をスムーズにするセラピーを受けたり、自宅で発話の訓練をしたりしました。その効果がすごくあって、以前よりなめらかに話せるようになりました」

帰国後は、オーストラリアでの経験を生かし、吃音の店員が接客するカフェを自らオープンする。

 「『吃音があっても接客はできる』。それを多くの人に知ってもらいたくて、2021年8月、住んでいた東京都世田谷区のシェアハウスで、『注文に時間がかかるカフェ』(注カフェ)を開きました。1日限定で、店員はみんな吃音のある高校生や大学生です。

 彼らがゆっくり接客できるように予約制とし、入店できるお客さんの数も制限しました。店員が吃音に関するクイズを出すなど、この障害に対する理解を深めてもらうための取り組みも行いました。その後、首都圏の各地でも同じように注カフェを開き、SNSなどで活動をPRしていると、『うちの地域でもやってほしい』という要望がたくさん舞い込むようになりました。今では全国的な展開になり、すでに50回以上は開催しています。

 ありがたいことに新聞やテレビにも取り上げてもらい、参加する吃音当事者が増えていくと、カフェ店員以外の仕事にも挑戦してみたいという声が上がるようになりました。『学校の先生になりたい』、『アパレル店で働きたい』――。そんなニーズに応えるため、模擬教室を開いたり、注カフェのアパレル店版をやってみたりもしています」

「からかってごめん」

注カフェの活動の広がりとともに、吃音に対する社会の受け止め方が少しずつ変わってきていることを肌で感じているという。

 「注カフェのことを知った中学校時代の同級生から、『あのときの奥村さんですか』とメールをもらったことがありました。『吃音についてからかってごめんな』と書かれていました。今では自分の子どもに吃音に関する正しい知識を教えてくれているそうです。純粋にうれしかったし、心の中につっかえていた感情がスーッと消えていくような気分でした。同時に、頑張って注カフェを続けてきてよかったと思いました。この活動に踏み出さなかったら、あり得なかったことでしょうから。

 注カフェの参加者でも、世の中に自分と同じ悩みを抱える吃音当事者が大勢いることを知らない人もいます。最近、著名な実業家が、かつて吃音に苦しんでいたことを明かし、注目を集めたこともありました。吃音に対する社会の受け止め方は少しずつ変わってきていて、恥ずかしいことでも、触れてはいけないものでもないという時代になってきているように感じています。

 私の活動が、周りと違うことに悩む人たちの自信につながり、違いを受け入れることのできる社会づくりに役立てたら、うれしいと思っています。これからも注カフェの取り組みを広げて、もっと世の中の意識を変えていきたいです」

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