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旧統一教会元信者の夫婦、多額の献金で生活困窮「私たちのように苦しむ人が出てほしくない」…解散請求1年

読売新聞 / 2024年11月20日 15時30分

旧統一教会への思いを語る元信者の夫婦(10月、福岡県内で)=木佐貫冬星撮影

 政府が宗教法人法に基づき、世界平和統一家庭連合(旧統一教会、東京)に対する解散命令を東京地裁に請求してから1年が過ぎた。憲法が保障する「信教の自由」の観点からも慎重さが求められる手続き。審理は長期化の様相も呈す中、多額の献金で生活が困窮し、家族関係も悪化した元信者の夫婦が「私たちのように苦しむ人が出てほしくない」と取材に応じ、胸中を打ち明けた。(水木智)

献金で困窮

 福岡県内で暮らす元信者の男性(74)は関西の大学生だった1970年、文化祭で信者の学生から声をかけられたことをきっかけに入信した。卒業後は教団関係者の教えに従って就職はせず、東北などでお茶や花束を売って回った。売り上げは全て献金し、昼食代程度の「お小遣い」を教団側から受け取ってしのぐ生活。「何をさせられているんだ」。次第に疑心と不信感を募らせた。合同結婚式で結婚した妻(75)とともに、教団側から逃れるため、79年頃に福岡に引っ越した。

 福岡ではエンジニアの仕事に打ち込み、子供にも恵まれ、教団側と縁も切れて平穏な暮らしを送っていると思っていた。しかし、2000年、長女から「献金しないといけないとお母さんに言われ80万円を貸した」と聞き、妻が献金を続けていたことが発覚。先祖供養などの名目で献金を繰り返し、預金は底をつきかけていた。

 その後、10年近くにわたる男性の説得で、妻はようやく教団と距離を置き、教団との関係は切れた。ただ、この間、経済的に厳しい生活を強いられ、旧統一教会を巡り夫婦が言い争いをして家庭内の雰囲気は悪化した。妻は今、「家族には本当に迷惑をかけた」と頭を下げる。

集団調停

 文部科学省は昨年10月、解散命令を東京地裁に請求し、非公開での審理が続いている。文化庁によると、過去に解散命令が出たのは、オウム真理教と、霊視商法詐欺事件の舞台となった明覚寺(和歌山県)の2件。請求から最高裁での確定までオウム真理教で7か月、明覚寺で3年を要した。

 解散命令が出ると、裁判所が選んだ清算人が法人の持つ債権を取りたてたり、債務を返済したりして法人の財産の整理を行う。最終的に残った財産があれば、国庫に帰属する。また清算後、宗教法人格がなくなり税制優遇はなくなるが、任意団体として宗教活動は続けることができる。

 全国統一教会被害対策弁護団などによると、昨年7月以降、夫婦を含む元信者ら約170人が、旧統一教会に計約52億円の損害賠償を求める集団調停を東京地裁に申し立てている。夫婦は計約3000万円の賠償を求めている。解散命令が出れば、調停が速やかに進む可能性もあるという。男性は「つらい体験をする人が二度と出ないように一日も早い解散命令が出てほしい」と話している。

        ◇

 九州の信者らでつくる任意団体「基本的人権・信教の自由を守る九州の会」事務局長の男性(64)によると、解散命令請求が出て以降、信者らに対する批判が強まり、勤務する会社を辞めざるを得なかったり、信者であることが分かり大学生が企業の内定を取り消されたりしたケースが起きているという。

 信者となって約40年になる男性は「信者全員が無条件に悪いというレッテルを貼られ、非難される状況。裁判所は現信者の思いもきちんと拾い上げた上で、判断を出してほしい」としている。

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