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他候補を大音量で詰問した「つばさの党」、黒川敦彦代表「正当な政治活動で妨害ではない」…初公判で無罪主張

読売新聞 / 2024年11月20日 21時45分

黒川敦彦代表(5月17日)

 4月の衆院東京15区補欠選挙を巡る政治団体「つばさの党」による選挙妨害事件で、公職選挙法違反(自由妨害)に問われた同団体代表・黒川敦彦被告(46)ら3人の初公判が20日、東京地裁(板津正道裁判長)であった。黒川被告ら3人は「正当な政治活動で妨害ではない」などと述べ、いずれの起訴事実も否認し、無罪を主張した。

 ほかの2人は、補選候補者で同団体幹事長の根本良輔被告(30)と、同団体組織運動本部長の杉田勇人被告(39)。3人は補選期間中の4月16~25日、街頭演説中の他の候補者に拡声機を使って大音量で詰問したり、選挙カーを追い回したりするなどして選挙の自由を妨害したとして、候補者4人の陣営に対する六つの罪で起訴された。

 黒川被告は罪状認否で起訴された事実について、「目的は相手陣営を邪魔することではなく、質問して隠しているウソを明らかにすることだ」と述べ、「憲法で保障された『表現の自由』に基づき無罪だ」と大声を張り上げた。

 検察側は冒頭陳述で、黒川被告らが遅くとも2022年頃から、自身や団体の知名度を上げたり経済的利益を得たりするため、選挙の立候補者のもとに押しかけて問い詰め、その様子を撮影してインターネットの動画投稿サイトに配信する行為を続けていたと指摘した。

 社会的に注目度が高かった4月の補選でこうした押しかけ行為を行えば話題になると考え、妨害行為を繰り返したとし、「動画投稿で注目を集めて視聴回数などを増やし、収益を得ることも期待していた」と主張した。

 一方、弁護側も冒頭陳述を行い、公選法の自由妨害罪は政治への不満や批判といった政治的な表現活動を過度に規制するもので憲法に反すると主張。同罪が定める「演説の妨害」や「交通の妨げ」といった条文では、適法・違法の区別ができず、不明確な規定による刑罰を禁じた憲法31条にも反すると訴えた。

 法廷では、検察側が証拠調べで、黒川被告らが配信した妨害行為の動画を再生した。ほかの候補者の選挙カーを追い回して黒川被告が大音量で詰問する映像が流れると、それを見た黒川被告が声を出して笑い出し、板津裁判長から注意される場面もあった。

広がる「当選よりSNS収益」

 東京都知事選(7月)や兵庫県知事選(11月)など、最近の選挙では、SNSの影響力の高まりが指摘されている。今回の事件のように、選挙活動への妨害を誘発しかねない状況にもなっており、識者からは対策を求める声が上がっている。

 この日の公判で検察側は、黒川被告らが利益を得るためにSNSを選挙で使っていたと言及しており、当選よりも収益を目的としたSNS利用も懸念されている。

 事件を受け、鳥取県は10月、選挙運動の動画配信などで得た利益について、選挙運動費用収支報告書への記載を義務づける条例を制定。担当者は「資金の流れを透明化させることで、SNSを利用した利益目的の過激な選挙運動を抑止したい」と語る。

 白鳥浩・法政大教授(現代政治分析)は「SNSはこれまで選挙に興味がなかった有権者に訴えを届けやすい上、広告収入も入ってくることから、政治や選挙活動での利用は増えていくだろう」と指摘。「注目を集めようと過激な言動を行う候補者は今後も現れうる。SNSの運営者側が政治的内容の動画に広告料を出さないようにするなど、利益目的の選挙運動をさせない仕組み作りが必要だ」と話している。

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