「冬のボーナス」民間企業の平均支給額40万円台は高い?低い? 「企業は頑張った」が...喜べない事情も
J-CASTニュース / 2024年11月20日 17時42分
冬のボーナスは楽しみ?
師走の足音が聞こえてくると、冬のボーナスが気になるものだ。いったいどのくらい出るのだろうか。
主要経済シンクタンクの「2024年冬のボーナス予想」が出そろった。民間企業の一人当たりの支給額は約40万円台になりそうだ。
これは喜んでいい額なのか、それともガッカリな額なのか?
去年冬は予想より低かった。今冬はその反動で大きく伸びそう
日本総研の「2024年冬季賞与の見通し」(11月11日付)では、民間企業の一人当たり支給額は前年比2.5%増の40万6000円と予想した。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「2024年冬のボーナス見通し」(11月8日付)でも、前年比2.5%増の40万5573円と予想。
一方、第一生命経済研究所の「2024・年冬のボーナス予測」(11月8日付)では、金額は示さなかったが、前年比2.7%増と予想した。
こうしたなか、最も多い額を予測したのが、みずほリサーチ&テクノロジーズ「2024年冬季ボーナス予測」(11月8日付)だ。前年比3.5%増の40万9399円という試算をはじきだした【図表】。
なぜ、ほかより高い予測を出したのか。J‐CASTニュースBiz編集部は、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部エコノミストの今井大輔さんに話を聞いた。
――ほかのシンクタンクは前年比2.5%増~2.7%増の伸び率ですが、3.5%増というかなり高い数字。どういう試算に基づいて出したのでしょうか。
今井大輔さん 今年は記録的な物価高と人手不足を背景に春闘が好調でした。賃上げ率は前年比5.3%増(厚生労働省ベース、民間主要企業)と、1991年以降の最高水準になりました。そこで、ボーナス算定の基準となる所定内給与の増加率を2.5%増と試算。また、支給月数も1.12か月と小幅ながら0.9%増と見込んでいます。
所定内給与に支給月数を掛けて、3.5%増の40万9399円という数字を出しました。総合的な判断として強気の数字を出した背景には、昨年冬のボーナスが予想よりかなり低かったこともあげられます。昨年も春闘の賃上げ率がよかったのに結果的に前年比0.7%増に終わりました。
今年の冬はその反動もあり、かなり伸びるだろうと期待しています。
全企業のボーナス支給総額が大幅増だから、個人消費は拡大する
――40万9399円という額ですが、企業はもっと出せるはずとみるのか、ずいぶん頑張ったなとみるのか。ズバリ聞きますが、喜んでいい数字なのか、それとも少しガッカリな数字でしょうか。
今井大輔さん 喜んでいい数字だと思いますよ。私たちとすれば、3.5%増というのは妥当な額で、企業としては十分奮闘して出す額と見ております。
――冬のボーナスによって個人消費の拡大は期待できるでしょうか。
今井大輔さん 期待できると考えています。内閣府が11月15日に発表した今年7~9月の国内総生産(GDP)速報値は、実質の季節調整値が前期比0.2%増、年率換算で0.9%増でした。個人消費に強い数字が出て、全体を押し上げています。10?12月も伸びは鈍化するものの、増加基調が続くと考えています。
【図表】を見てください。民間企業の冬のボーナス支給総額は人手不足を背景とする、労働者つなぎ止めを目的としたボーナス支給を実施する企業の増加により、前年比6.4%増と大幅に押し上げられる見込みです。
ボーナスを支給する事業所、支給される労働者の数も大幅に増えますから、個人消費は拡大すると思われます。
そう喜べないのは結局、人手不足が解消しないから
――今冬のボーナスのことで、特に強調しておきたいことがありますか。
今井大輔さん 冬のボーナス支給額が上昇する背景には、今年の春闘の賃上げ率が高かったことと、企業業績が好調だったことの2点があげられますが、私たちは、賃上げ率の高さのほうがより大きな要因と考えています。
人手不足の進行があまりに深刻なため、高い賃金を支払わないと労働者を集められない現実があります。我々は日本経済の本質的な課題は、デフレから人手不足へと変化しつつあると考えています。
たとえば、建設業の人手不足が建設投資の重石になっているほか、すでに観光地でオーバーツーリズムの問題も指摘されているところですが、宿泊業などの人手不足でインバウンド需要を十分に取り込めないなど、供給制約が需要の顕在化を妨げている状況です。
――つまり、冬のボーナスがいいからと言って、ウハウハ喜んでばかりはいられないということですか。
今井大輔さん そのとおりです。人手不足が供給の天井となっています。それもかなり低い天井です。経済の成長力を高めるためには労働生産性の上昇などを通じて人手不足によるボトルネックを回避することが重要です。
労働生産性の上昇は来年以降の持続的な賃金上昇にもつながります。
(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)
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