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カマキリが路上に集まるのは「寄生したハリガネムシが行動を操作」…京大など研究チームが発表

読売新聞 / 2024年11月21日 14時0分

 秋になると、道路上で車にひかれたカマキリを見かけることが多い。「体内に寄生したハリガネムシによって行動を操作されたカマキリが、水辺と間違えてアスファルトの道路に向かっている」。京都大などの研究チームが、そんな実験成果を論文にまとめ、国際科学誌に発表した。(松田祐哉)

 ハリガネムシは直径2~3ミリ、体長30センチ前後の細長い寄生虫。水中で孵化ふかし、昆虫を宿主とする。水中でまずカゲロウなどの水生昆虫に寄生する。その昆虫が陸上に移動し、カマキリに食べられると、ハリガネムシは、今度はカマキリに寄生する。秋になると水中で産卵するため、カマキリの行動を操り、水辺へ向かわせることが知られている。

 チームはこれまでに別の種類のカマキリを使った研究で、ハリガネムシがカマキリの遺伝子を取り込み、宿主の体を乗っ取っている可能性があることを明らかにした。だが、なぜ水辺ではなく道路へ向かうカマキリが多いのかは謎だった。

 京都大の佐藤拓哉准教授(生態学)、大学院生(当時)の澤田脩那さんらは、「水平偏光」と呼ばれる性質に着目した。

 光は通常様々な角度や方向に振動しながら進むが、振動が特定の方向に偏る「偏光」という性質があり、水面に反射した光では、振動が水平方向に偏った偏光が強い。チームはアスファルトで反射した光も、水面とほぼ同じ強さの水平偏光になっていることを確認した。

 そのうえで、アスファルトと、水平偏光がアスファルトよりも弱いセメントの模擬道路にハリガネムシが寄生したカマキリ22匹を放つ実験を行うと、大半がアスファルトに集まった。

 日本と台湾の野外で採集した計184匹を調べると、アスファルト上にいたカマキリの80%以上にハリガネムシが寄生していた。

 佐藤准教授は「ハリガネムシは生存のためカマキリを操るように進化したが、アスファルトの道路が増えるという環境の変化で逆に不利な状況に陥っているのではないか」と話す。

生物の共生に詳しい産業技術総合研究所の深津武馬・首席研究員の話「ハリガネムシがどのようにカマキリを操っているのか、詳しい仕組みを明らかにしてほしい」

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