1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

生活道路に「ゾーン30プラス」じわり増加…段差などで速度抑制、振動懸念で整備が進まない県も

読売新聞 / 2024年11月21日 15時1分

 生活道路に段差やポールなどを設けた「ゾーン30プラス」と呼ばれるエリアが、じわりと増えている。通行する車の速度や量を抑え、事故を防ぐのが狙いで、国の制度化から3年で120地区超に整備された。ただ、景観や振動への懸念から住民の合意が得られず、整備がなかなか進まない県もある。国は自治体向けの手引を作るなどして、理解や普及に力を入れる。(野崎達也)

 横浜市南区大橋町の住宅街。一角には小学校があり、周辺の道路は通学路になっているが、「以前は幹線道路の抜け道に使われ、制限速度30キロを超えて走る車が多く『怖い』という声があがっていた」と、近くの男性(83)は話す。

 男性ら地元住民や市、警察などが対策に乗り出したのは2021年。ゾーン30プラスの制度を利用し、危険性の高い11地点に、高さ約10センチの緩い段差「ハンプ」やポールを立てて道幅を狭めた「狭さく」を設けるなどした。

 効果はてきめんだ。国や市の調査では、狭さく設置路線で車の平均速度が時速35・5キロから27・4キロ、ハンプ設置路線で42・5キロから30・0キロにそれぞれ低下した。

 住民からは「ハンプ通行時に振動が発生しないか」と不安の声もあったが、男性は「思ったより振動も少なく、車のスピードが落ちたと実感する人が多い。やって良かった」と話す。

 幅員5・5メートル未満の狭い道路での事故は昨年、全国で7万3607件起きており、このうち死亡事故は408件に上る。

 ゾーン30プラスは、生活道路での事故を減らすため、21年に制度化された。最高時速が30キロに制限される「ゾーン30」(11年導入)の指定エリアに物理的対策をプラスして行うもので、自治体は車の速度の調査や試験設置を行う際、国の支援を受けられる。

 国土交通省によると、今年3月時点で128地区に整備され、計画中も64地区に上る。だが、4358地区のゾーン30に比べると少なく、未設置の県もある。

 ハードルとなっているのが住民の合意だ。和歌山県は整備ゼロで、和歌山市の担当者は「ハンプを試験的に設置したが、住民から『車が通りにくくなる』という声もあり、本設置には至っていない」と話す。

 愛知県豊田市の国立豊田高専の山岡俊一教授(交通計画)が19年、生活道路に物理的対策を行うことの賛否を県民ら約1400人にアンケート調査したところ、狭さくは「景観への影響」などを理由に45%が反対。ハンプについても車の通行時の振動を懸念する人が多く、反対が28%に上った。

 山岡教授は「振動を抑える技術も発達していることを知ってもらい、安全対策の選択肢を増やすことが重要だ」と指摘する。

 こうした課題を踏まえ、国交省は今年度、合意形成に成功した事例などを紹介する手引を作成し、自治体に配布する計画だ。

 設置基準についても、軽自動車の車幅に比べて、狭さくの目安(幅3メートル)が広いため「効果が限定的」との指摘もあることから、見直しを進めている。

 同省の担当者は「豪雪地帯では除雪の妨げにならないようポールを着脱式にするなど、工夫を凝らした事例もある。こうした先進事例を広く共有し、整備を促したい」としている。

法定速度の引き下げ、2026年9月に施行へ

 幅員の狭い「生活道路」の自動車の法定速度について、政府は7月、一律に時速60キロから30キロに引き下げる改正道路交通法施行令を閣議決定した。2026年9月に施行される見通しだ。

 ゾーン30については、警察庁は法定速度の一律引き下げ後も、「ドライバーへの周知効果がある」として制度を継続する方針だ。国交省はゾーン30プラスについても引き続き、30キロ制限の道路を対象に拡大を目指す。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください