ウクライナの長射程ミサイルにロシアの弾道ミサイル…「レッドライン」越え攻撃の応酬が激化
読売新聞 / 2024年11月21日 21時49分
ロシアが21日、ウクライナ東部に弾道ミサイルや巡航ミサイルで大規模な攻撃を加えたのは、ウクライナへの軍事支援を強化する米欧に強く警告するためとみられる。大陸間弾道ミサイル(ICBM)を撃ち込んだ可能性もある。ロシアの侵略開始から1000日が経過し、攻撃の応酬はエスカレートしている。
ウクライナ側が露軍がICBMを発射したと発表したことについて、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は21日の記者会見で「我々の軍にするべき質問だ」と述べ、肯定も否定もしなかった。
ウクライナのニュースサイト「ウクライナ・プラウダ」は、関係者の話として、露軍が発射した「ICBM」について、移動式固体燃料の「RS―26ルベジ」だと伝えた。射程は約5800キロ・メートルとされ、核弾頭の搭載が可能だ。射程3000~5500キロ・メートル程度の中距離弾道ミサイル(IRBM)に限りなく近いICBMとも称される。
ロシアのプーチン大統領は今年9月、米欧供与の長射程兵器による露領内攻撃があれば、「北大西洋条約機構(NATO)とロシアが戦うことを意味し、紛争の本質が変わる」と強調した。露領への攻撃に使用することの容認は「レッドライン(越えてはならない一線)」とも警告していた。
北朝鮮兵のロシア派遣が取りざたされるようになって以降、米欧はウクライナへの支援を強化している。今月17日には米国のバイデン政権がウクライナに供与した最大射程300キロ・メートルの地対地ミサイル「ATACMS」による露領攻撃を容認したと報じられ、19日にはATACMSが露西部への攻撃に投入されたとされる。
仮に、ロシアがICBMを発射していたとすれば、米国本土や欧州全域を射程に収める兵器の存在を誇示することで、米欧に軍事支援をこれ以上行わないよう威嚇する意味合いが強い。国境を接するウクライナへの攻撃に長距離弾道ミサイルを使用する必要はない。
プーチン氏は今月19日、核兵器の使用要件を定めた「核抑止力の国家政策指針」(核ドクトリン)の改定を承認し、核の使用要件を緩和した。プーチン氏は核使用の可能性も示唆してきた。
一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領はプーチン氏の「核による威嚇」を「はったり」とみて米欧に支援を求めてきた。ただ、露軍はウクライナ軍が越境攻撃で一部を制圧したクルスク州の奪還に向け、北朝鮮兵と近く攻勢に出る可能性が指摘される。東部ドネツク州でも全域の占領に向け攻勢を続けている。米欧の支援が停滞すれば、戦況はさらに露軍の優位に傾く恐れもある。
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