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デンマークが拘束中の反捕鯨活動家、早期引き渡し要請に海上保安庁捜査トップを異例の海外派遣

読売新聞 / 2024年11月22日 5時0分

 日本の調査捕鯨船への妨害事件で国際手配され、7月にデンマーク自治領グリーンランドで拘束された反捕鯨活動家ポール・ワトソン容疑者(73)について、海上保安庁が9月下旬、捜査部門トップの警備救難部長を同国へ派遣し、身柄の引き渡しを直接要請したことがわかった。ただ、その後も判断は保留され、勾留は21日で4か月となった。釈放されれば、危険な妨害行為の再燃も懸念される。(森田啓文、浜田萌)

9月下旬渡航

 海保関係者によると、海上犯罪の捜査を担う警備救難部長と刑事課の職員らは9月24日にコペンハーゲンへ出発し、往復を含め1週間近く渡航した。現地ではデンマーク司法省の幹部らと協議の場を設け、ワトソン容疑者の関与を裏付ける捜査資料を説明するなどして、早期の引き渡しを改めて要請した。

 デンマーク側は引き渡し時期を明言しなかったが、同部長の異例の海外派遣について海保関係者は「捕鯨の是非を問うつもりはなく、あくまで法と証拠による検挙を目指す。その姿勢を示した」と強調する。

 海保は2010年、南極海で捕鯨船への妨害を命じたとして、▽傷害▽威力業務妨害▽艦船侵入▽器物損壊――の4容疑で反捕鯨団体「シー・シェパード」代表だったワトソン容疑者の逮捕状を取り、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて国際手配した。当初は「青手配」で所在発見を要請し、12年に拘束を求める「赤手配」に切り替えた。

 手配への対応はICPO加盟国の判断に委ねられるが、グリーンランドの警察は今年7月21日、「キャプテン・ポール・ワトソン財団」メンバーと船で主要都市ヌークに寄港したワトソン容疑者を手配に基づき拘束。海保は同31日に外交ルートを通じて引き渡しを要請していた。

立場「ねじれ」

 ワトソン容疑者の勾留が4か月に及ぶ中、デンマーク側は依然、引き渡しの可否を決めていない。自治領のグリーンランドでは先住民による捕鯨が行われているが、本土のデンマーク政府は国際捕鯨委員会(IWC)などで反捕鯨の立場を取る。手配に応じて拘束したのに引き渡し判断が延びているのは、こうした「ねじれ」が一因とみられる。

 この間、容疑者側は居住先がある反捕鯨国フランスに政治亡命や仏国籍取得を申請し、引き渡し回避を画策してきた。ワトソン容疑者は12年にも中米コスタリカの国際手配に基づきドイツで拘束されたが、引き渡し前に保釈されて逃亡した経緯がある。

釈放なら再燃懸念

 一方、海保や捕鯨関係者は、ワトソン容疑者が早期に釈放された場合、日本近海での過激な妨害が発生することを懸念している。

 日本が南極海での調査捕鯨を取りやめ、領海と排他的経済水域(EEZ)内に限った商業捕鯨に切り替えた19年以降、捕鯨船への妨害はなかった。だが、ワトソン容疑者らは今年、最新鋭の大型捕鯨船「関鯨丸」への妨害を唐突に宣言。北太平洋に向けた航海の途中、補給のために立ち寄ったヌークで拘束された。

 関鯨丸などで商業捕鯨を行う「共同船舶」(東京)の所英樹社長は「かつて南極海で起きた妨害行為が日本近海で再発し、乗組員や船に危険が及ばないか心配だ」と話した。日本近海に妨害船が現れれば、海保も、沖縄県・尖閣諸島で中国海警船から日本漁船を守っているのと同様に、捕鯨船の安全を確保するための警備が必要になるとみられる。

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