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車の危険運転 遺族の訴えを生かせる改正に

読売新聞 / 2024年11月22日 5時0分

 車の悪質な運転者が厳しく裁かれない現状に、遺族が不満を募らせるケースが相次いでいる。無謀な運転を抑止するためにも、厳正に処罰できる法律に改める必要がある。

 法務省の検討会が、自動車運転死傷行為処罰法の「危険運転致死傷罪」について、要件の見直しを求める報告書案をまとめた。猛スピードや飲酒運転による事故に適用する際、速度や飲酒量の数値基準を導入するよう促す内容だ。

 車の人身事故は一般に、運転ミスによる過失と見なされてきた。しかし、東名高速道で女児2人が死亡する飲酒運転事故が起きたのを機に2001年、危険運転致死傷罪が新設された。

 法定刑の上限は、「過失運転」の場合、懲役7年だが、「危険運転」は悪質な故意犯として懲役20年と重くなっている。実態を適切に見極めて処罰することが重要なのは、言うまでもない。

 ところが、実際には全国各地で法適用の混乱が見られる。

 大分市では、法定速度60キロの道路を194キロで走った車による死亡事故で、運転者が当初、過失運転で在宅起訴された。群馬県伊勢崎市で飲酒運転のトラックに衝突されて家族3人が死亡した事故も、起訴は過失運転とされた。

 いずれも遺族の訴えを受けて危険運転に訴因変更されたが、当初の検察の判断は市民感覚と著しく乖離かいりしていたと言えよう。遺族が納得できないのは当然だ。

 検察が危険運転の適用に慎重になる背景には、現行法の曖昧さがあるとされる。危険運転は「制御困難」な速度や「正常な運転が困難」な飲酒での事故などに適用されるが、明確な数値基準がないため、立証のハードルが高い。

 そのため検討会は今回、基準となる速度や飲酒量を定め、それに達すれば、一律に危険運転とみなすよう求めた。数値基準があれば判断のばらつきも少なくなるはずだ。妥当な提案であり、国は基準作りを進めてほしい。

 ただ、基準ができても、それだけに頼っていては、正しく判断できない事例もあるだろう。速度が基準を下回っていたとしても、飲酒などの複合的な要因が加わることで全体として危険運転と評価されることは十分あり得る。

 数値基準を活用しながら、最終的には、事故の全体像を捉え、適切に判断することが大切だ。

 当然のことではあるが、速度超過や飲酒の状態で車を運転しないという意識を、社会全体で改めて徹底することも欠かせない。

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