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大型車のタイヤ脱落が急増、昨年度は142件…巻き添え死傷も目立つ

読売新聞 / 2024年11月22日 14時18分

 走行中の大型トラックからタイヤが外れる事故が増え、巻き添えになった第三者が死傷するケースが目立っている。国土交通省によると、2023年度の脱落件数は過去20年で最多の142件に達し、11件だった11年度の約13倍だった。同省は不適切な整備が主な原因とみて、点検の徹底を呼びかけている。(青森支局 八巻朱音)

ナットの緩み

 「運行前の日常点検はしましたか」。青森市内の国道7号で14日に行われた街頭点検。自動車整備士らが、タイヤのナットが緩んでいないかを工具で確認した。

 昨年12月1日、青森県八戸市の高速道路で大型トラックの左後輪(直径約80センチ、重さ約70キロ)が外れ、路肩にいた作業員2人が死傷した。ナットが外れており、運転手らが点検を怠ったとみられている。

 同省によると、脱落はタイヤの装着から1か月以内に起きることが多い。冬用タイヤへの履き替え時期を迎え、青森運輸支局の原子雅重支局長は「適切な車輪の着脱と日頃の点検を徹底してほしい」と語った。

9割が左後輪

 国内のタイヤの取り付け方式は10年に独自規格から国際規格に変わった。例えば左タイヤはナットを締める方向が左回りから右回りになり、国交省自動車整備課の担当者は「規格に合わせた整備が適切にできていない可能性もある」と指摘する。同省が脱落を起こした119台を調べると、多くでナットの緩みや劣化部品の使用が見られた。

 23年度に142件あった大型車(総重量8トン以上など)のタイヤ脱落のうち、9割以上が負荷のかかりやすい左後輪だった。国交省によると、速度を保って右折すると、遠心力で積み荷の重みが左後輪にかかり、旋回が小さい左折時も、左後輪にねじれるように力が向かう。道路は排水機能を持たせるため路肩より中央部がやや高く、その分、左タイヤへの負荷が増える。

行政処分導入

 タイヤが脱落した場合、歩行者などが直撃を受けることがある。脱落に伴う人身事故は、23年度までの10年間で25件起きている。

 国交省は昨年10月、運送会社が脱落事故を起こした場合、車両の一定期間の使用停止や整備管理者の解任命令などを定めた行政処分を導入。全日本トラック協会(東京)も今月、全国約5万5000の事業所に対し、正しい作業手順などをまとめたパンフレットを配布した。

 ナット同士をつなげて緩みを知らせる樹脂製用具もある=写真=。タイヤに取り付けた東北地方の運送会社幹部は「国際規格になっても点検と整備を徹底すれば脱落は防げる」と話し、業者側の認識が重要だと指摘する。

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