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隈研吾氏、生成AI画像ヒントに「自分超え」…心の機微に触れる領域「計算させられない」

読売新聞 / 2024年11月22日 5時0分

生成AIの活用について語る建築家の隈研吾氏(9月6日、東京都港区で)=野口哲司撮影

[生成AI考]第4部 混乱の先に<5>

 〈現代建築〉〈都心に建つ木造の美術館〉――。9月上旬、世界的な建築家として知られる隈研吾氏(70)の事務所。所員がパソコン画面で下絵を描き、画像生成AI(人工知能)にキーワードを打ち込むと、建物の立体的な画像があっという間に表示された。

 建物の完成予想図であるパース(立体絵)。これまではまず平面図を作成し、耐震性なども考慮して作っていた。1週間かかっていた作業が10分で済むようになり、隈氏は作業の効率化という点でAIは「圧倒的な能力」と評価する。

 事務所では昨年初め頃から作業の一部でAIを試験的に使っている。国内外で手がける400件のプロジェクトを、スタッフ400人でこなせるのはAIの存在が大きい。作業時間が浮いた分、顧客との打ち合わせやアイデア出しの時間を増やすことができた。

 隈氏がAIを使うのは、単に業務を効率化するためだけではない。画像生成AIが作り出す画像をヒントに、新たなデザインを生み出し「隈研吾を超えよう」と考えている。「隈研吾の建築」を機械学習したAIが、自身が設計した建物に似たデザインを描き出すのを見て、「次の自分にいこう」と背中を押される。

 一方、隈氏は、AIを使うことによって、人間でなければできない仕事が山ほどあることに気づいた。

 建物の設計に当たっては、設計士が顧客の意向をくみ取り、人が使いやすい機能を備えた空間に磨き上げる必要がある。都会の大型施設であれば、近くに住む人たちがどう感じるか、社会にどう受け止められるかも考えなければならない。心の機微に触れる領域に、隈氏は「社会の動きを見ながら、世の中の潮流や空気を読んで判断している。それをAIに計算させることはできない」と言い切る。

 デザインを決めてどのような建物を建てるか最終的な判断を下すのはあくまで人間であるべきだ――。AIを使うことによって、逆に機械には決して任せられない責任があることをはっきり意識するようになった。

 AIが社会に普及し、仕事の一部をAIに作業させる動きが出ている。独立行政法人「情報処理推進機構」が企業などで働く約4900人を対象にした調査によると、AIを業務に利用している、または利用可能な状況となっている人は3月時点で16%だった。顧客への質問回答や翻訳などに用いられており、同機構はAIの利用がさらに加速するとみる。

 一方、AIを利用している、または利用の予定があるなどと回答した1000人のうち、約6割がAIによる虚偽情報の拡散や情報漏えいなどを「脅威」と答えた。

 生成AIを巡っては、著作権侵害の問題もある。著作権法は、著作権者の利益を不当に害する場合を除き、AIによる著作物の無断学習を認めている。権利者団体などは機械学習の拒否など権利の保護を訴えている。

 隈氏の事務所でも活用するAIは著作権侵害などのリスクを慎重に検討し、所員には情報セキュリティーに関する教育を行っているという。

 業務の効率化が期待される一方、リスクも伴う生成AI。いかに使いこなすか問われる時代を迎えている。

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