斎藤元彦氏、文書問題「関心低い」vs稲村和美氏「マネジメントに問題」 知事選後の動画番組でも違いクッキリ
J-CASTニュース / 2024年11月22日 14時59分
斎藤元彦氏の公式サイト
兵庫県知事選で再選した斎藤元彦氏(47)と接戦で次点になった前尼崎市長の稲村和美氏(52)がインタビュー動画にそれぞれ出演し、2人が語った内容の対比が話題になっている。
動画は、メディア企業「tonari」(東京都港区)が運営するユーチューブチャンネル「ReHacQ(リハック)」で、知事選翌日の2024年11月18日と19日にライブ配信された。2人をインタビューしたのは、テレビ東京プロデューサー出身の高橋弘樹社長だ。
斎藤氏「自分で調べた人が多く、政治を変える転換点」
18日に先に出演したのは、斎藤氏だった。斎藤氏は、リハックが用意した部屋に来て、緊張した面持ちで席に座った。次第に笑顔になり、高橋氏からの質問に次々と答えていった。
選挙戦について、斎藤氏は、メディアでは知事の資質やパワハラ疑惑などの文書問題が争点とされたが、県民は暮らしに関心が強いと考え、主に政策を訴えたと明かした。在職中は県立大の授業料無償化や不妊治療の支援を行ったため、若い世代や女性から声をかけられることが多く、県民は政策を見ていると強く感じたという。その結果は、共同通信などの世論調査で、文書問題への関心は9%と低いことに現れていると指摘した。
メディアによる疑惑追及については、テレビや新聞は、裏付け取材はされていたが、若い世代を中心に、報道に違和感があると伝えられることが多かったとした。何が正しいか自分で調べた人が多く、政治のあり方を変える転換点だと感じたと明かした。
例えば、おねだり疑惑でワインを飲んでみたいとの音声が報じられたとき、報道で世の中の流れが作られたため、斎藤氏がよくないことをしているとされた。しかし、実際は、県議から生産者を応援してほしいと言われて話しただけで、こうしたことが知られて違和感を持たれたのではないかという。
ただ、今後はカニをもらうか聞かれ、斎藤氏は、ルール作りが必要だと説明した。疑惑が出た後は、断っていたが、生産者は食べてほしいと思っているため、今後は、「見える化」をするなど試行錯誤していく考えを示した。
斎藤氏「政策を評価する職員や議員がおり、うまくやれる」
関係が悪化したとされる県職員や議会と今後どう付き合っていくのか聞かれ、斎藤氏は、エピソードを交えながら、自らの考えを話した。
年末年始の予算協議で職員の待機が1か月も続くのを見かね、待機を数日に減らしたところ、駅の街頭活動で、若い職員から「斎藤さんになって残業がすごく減りました」と声をかけられたという。働き方改革などについては、職員とマインドが同じなため、「ありがとう」などと声を出すよう改めれば、やっていけるのではないかとした。
また、議会についても、全会一致で不信任になった後、政策に共鳴して応援してくれた議員もいたとした。そのため、民意を得た今では、政策中心に議論すれば理解も得られるのではないかと述べた。議会では、会派の党議拘束があったため、全会一致になったが、実際は、民意とねじれがあり、表立って応援できないがメールを送ってくれた議員もいたという。
選挙戦では、県内の22市長が対立候補だった稲村氏への支援を表明し、相生市の谷口芳紀市長は、机をバンバン叩いて斎藤氏を批判していたが、斎藤氏は、「ちょっとびっくりしました」としながらも、「すごくいい人」と非難しなかった。稲村氏に対しては、「以前から存じあげていて、非常に実績もある方ですので、すごく尊敬しています。選挙後は、ノーサイドで行きたいと思っています」と話した。
選挙戦のフィナーレで、数千人が集まったとき、「自分を超えた何が動いた」と感じ、鳥肌が立ったという。とはいえ、パワハラ疑惑などが指摘されたのは事実で、「自分は、色々と学びましたので、謙虚に気を引き締めてやらないといけないと思っています」と抱負を語った。
稲村氏「市民派なのに、従来型政治の代表者と思われた」
一方、稲村氏は、11月19日に選挙関係者の家からビデオ出演した。少し疲れた様子だったが、笑顔も見せた。
選挙戦について、稲村氏は、街中では応援する人が目についたが、ネット上では、違う言説が飛び交い、その温度差を感じるところがあったと明かした。最後に逆転された敗因について聞かれると、自らは市民派として活動してきたが、既得権や従来型政治の代表者と見られる感じが強かったと振り返った。従来型政治を変えていこうという立ち位置にいたが、力不足でそこが十分伝えられなかったのが敗因だという。ただ、SNSの影響力が指摘され、組織とは別のツールが示されたとして、新しい選挙戦の形が見えたとの見方を示した。
既得権側と見られてしまった理由については、尼崎市長時代と違って、つながりのないエリアも多く、議員や首長ら政治家が関わる割合が多くなったことを挙げた。阪神・淡路大震災のときのボランティア活動で被災者に向き合わない政治に疑問を持ったのが政治家になったきっかけで、自らを「市民自治派」と称して兵庫県議時代には前の県政に対し財政問題で批判的に発言していたという。しかし、今回の選挙戦では、議員イコール従来型政治の代表者と思われてしまったと述べた。
政策については、文書問題への対応のあり方や行政組織のガバナンスについて、斎藤氏のマネジメントに問題点を感じて立候補したと説明した。知事に進言するのは難しい雰囲気があり、文書問題でも、もっと積極的に第三者委員会をやるなど対応の仕方があったのではと問題提起した。県政が停滞していると感じたため、改めるところは改めるべきだと今回チャレンジしたと明かした。
稲村氏「自らの実像が伝わらないリスクを感じた」
SNS上で、斎藤氏を追及したメディアや議会へのバッシングが過熱したことについては、斎藤氏も自らもネットでレッテル張りされ、自らは、中道左派と思っているのに極左だと叩かれたという。稲村氏が斎藤氏のマネジメントを問題視すると、「何で悪口を言うのか」「批判ばっかり」と言われ、反論すると「斎藤さんはやられてきたんじゃないの?」と返されたとした。ネットでは、極端から極端に振れる印象があり、斎藤氏に何か申すのはいけないというのは、健全ではないと訴えた。
一部識者などから、民意がまずい方向に行っており、有権者が誤った判断を下したと指摘されたことを聞かれると、稲村氏は、ナチスドイツも民主主義から出てきたことを想起しているのではないかとの見方を示したが、今回は、そういうこととはまったく別の話だと述べた。SNSの影響力には課題があるものの、組織だけではなく自ら判断し、投票率が上がったのはすごく重要であり、「今回の選挙の結果は間違っていたとは、到底言うつもりはありません」と話した。ただ、「リスクを感じなかったと言えば、ウソになります」とし、それは、自らの実像が十分に伝わらなかったり、変えた方がいいと言っていたのと反対の立場にされたりしたことを挙げた。
稲村氏は、生活の苦しさや大きな不満から、仮想敵を作ってストーリーが作られるポピュリズムが来るとして、制度の見直しやリテラシーの向上などを通じ、民主主義が健全に機能するためにリスクと向き合い続けるべきだと指摘した。そして、文書問題については、斎藤氏を一方的にバッシングしたと感じさせたのは問題で、斎藤氏も受け止めるべきところは受け止める必要があると指摘した。
(J-CASTニュース編集部 野口博之)
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