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PR会社が齋藤元彦氏のSNS戦略を「手の内自慢」...問われる公選法との整合性 斎藤氏側は依頼自体を否定

J-CASTニュース / 2024年11月22日 19時37分

PR会社が齋藤元彦氏のSNS戦略を「手の内自慢」...問われる公選法との整合性 斎藤氏側は依頼自体を否定

齋藤元彦氏のインスタグラム(@motohikosaito_hyogo)より

広報やPRのコンサルティング事業などを行う「merchu(メルチュ)」の代表が、2024年11月17日に行われた兵庫県知事選挙で、再選を果たした齋藤元彦氏の広報・SNS戦略を担当していたとnoteで明かした。これに、報酬を得ていれば公職選挙法違反ではないかとの疑問が相次ぎ、注目が集まっている。実際はどうなのか。弁護士の見解を聞いた。

なお、斎藤氏側はSNS戦略の企画立案は依頼しておらず、あくまでポスター制作等を依頼したとして、公職選挙法への抵触を否定している。

「#さいとう元知事がんばれ」のハッシュタグも発信

今回の知事選は、パワハラ疑惑による県議会全会一致の不信任を受けた斎藤氏の失職によるものだ。失職当時は批判の声が大きく、齋藤氏にとっての風当たりは強かったが、齋藤氏が県議会の百条委員会で証人尋問を受けるまでの経緯をめぐり、真偽不明のものを含めさまざまな情報がSNS上に飛び交うように。次第に斎藤氏を応援する声が増え、知事へと返り咲いた。再選はSNSの影響も大きかったとされている。

問題となっているのは、メルチュ代表・折田楓氏が20日に公開した「兵庫県知事選挙における戦略的広報:『#さいとう元知事がんばれ』を『#さいとう元彦知事がんばれ』に」と題した記事だ。

記事では、兵庫県知事選挙における斎藤氏のSNS運用について、折田氏が「監修者として、運用戦略立案、アカウントの立ち上げ、プロフィール作成、コンテンツ企画、文章フォーマット設計、情報選定、校正・推敲フローの確立、ファクトチェック体制の強化、プライバシーへの配慮などを責任を持って行い、信頼できる少数精鋭のチームで協力しながら運用していました」と説明されている。

記事によると、斎藤陣営の公式アカウントは、斎藤氏のXアカウント、インスタグラム、公式YouTubeチャンネル「【公式】届け、さいとう元彦の声」、Xアカウント「【公式】さいとう元彦応援アカウント」の4つ。「私のキャパシティとしても期間中全神経を研ぎ澄ましながら管理・監修できるアカウント数はこの4つが限界でした」とあり、折田氏が管理・監修していたようだ。

また、「#さいとう元知事がんばれ」のハッシュタグの発信も行っていたという。ほかにも、プロフィール写真やコピーの一新、公約スライドの制作など、行った広報戦略が紹介されている。

斎藤氏のオフィス訪問の記述や「SNS運用フェーズ」の画像が削除

さらに、記事には22日朝までに文章や画像の一部削除など内容が変更されており、SNSで波紋が広がっている。変更された主な内容は次のようなものだ。

まず、今回広報戦略を担うことになったきっかけは、齋藤氏がメルチュのオフィスを訪れたことだったとする説明だ。折田氏は広報PRの有識者として県の会議に複数出席したことがあったため、斎藤氏とは面識があったとしている。この斎藤氏のオフィス訪問と斎藤氏との面識に関する部分が削除されている。

また、提案資料の一部として公開された「SNS運用フェーズ」と記載された画像も削除されている。大まかなスケジュールを記載した表で、10月1日から13日に「立ち上げ・運用体制の整備」、10月14日から31日に「コンテンツ強化(質)」、11月1日から17日に「コンテンツ強化(量)」と記載されている。

なお、今回の県知事選の告示日は10月31日だ。立候補の届け出以前の段階で「政治活動」は可能だが、当選を目的に投票を勧める「選挙運動」は禁止されている。

さらに、「ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました」との一文も削除されている。

ポイントは「選挙運動員」か「事務員」か

この記事に記載されているメルチュの活動は、公職選挙法違反に当たる可能性はあるのか。特に、報酬を受け取っていた場合はどうか。

J-CASTニュースの取材に応じた弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士は、

「兵庫県知事選における齋藤元彦氏の当選のための得票を目的として運動しているように見えますから、もしも齋藤氏から株式会社merchuにお金が払われていたりしたなら、公職選挙法違反になる可能性があります」

と指摘する。

選挙運動員の買収について、正木弁護士は、「インターネット上での活動であれ、『選挙運動』に対して報酬を支払っていた場合、そのほとんどは公職選挙法違反になる可能性があります」と説明する。選挙運動とは、総務省のサイトによると、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」。この活動に対して報酬を払う場合、公職選挙法221条1項に該当することが多いという。

しかし、報酬の支払いが認められている例外もある。車上運動員(いわゆる「うぐいす嬢」)や事務員がそれにあたるという。

正木弁護士は、記事を読む限りでは、折田氏らが「選挙運動員に当たるということまでの断言はできません」ともみている。

「選挙活動中も、単なる事務員に対してであれば報酬を払う事が許されており、実際の活動内容によっては、本条の適用外になる可能性もあります」

広報全般を任せていれば「選挙運動員に当たる可能性が高くなる」

記事で削除された「SNS運用フェーズ」の画像について、SNS運用について告示前からのスケジュールが記載されているが、告示前からSNS戦略が行われていたとしたら、公職選挙法違反となるのだろうか。

正木弁護士は、実際に選挙運動に当たるかどうかは裁判所が判断するため「今回のSNS運用が事前の選挙運動に当たるのかどうかを断言はできません」としつつ、「例えばハッシュタグであれば『♯さいとう元知事がんばれ』ですから、特定の選挙を意識などしたものでもなければ投票を呼び掛けるものでもなく、選挙運動に該当しない可能性が高い」とみる。

また、削除された「ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました」との文章についてはどうか。総務省のサイトでは、「一般論としては、業者が主体的・裁量的に選挙運動の企画立案を行う場合」に業者へ報酬を支払うと、買収となるおそれが高いとしている。

折田氏が主体的に企画立案したことを示していることにならないだろうか。

正木弁護士は、あくまで折田氏とメルチュ従業員が「規制対象である選挙運動員に当たるかどうかが重要」とし、実際の活動において「事務作業に留まらず広報全般を任せているなら、それは単なる事務員などではなく、選挙運動員に当たる可能性が高くなるように思います」とした。

報酬を受け取っていない場合の見解は

では、メルチュが斎藤氏から報酬を受け取っていない場合は問題があるのか。

正木弁護士は、「現行法では、株式会社merchuが一私人として行ったSNS運用やハッシュタグの拡散といったSNS戦略での選挙活動の手法を直接規制する規定はありません」という。

しかし、懸念点はあるという。「ウェブサイト等を利用する方法でインターネット上での文書図画の頒布を認める法律」(公職選挙法142条の3)で、頒布者の連絡先を表示させることが義務付けられていることを挙げる。「無責任な頒布を抑止し、反論の機会を確保するため」という。

「違反したからといって罰則はないのですが、ハッシュタグの利用などは、本条の趣旨に反して無責任な情報の拡散に利用される可能性があり、今後の規制も検討されるのではないでしょうか」

メルチュ「現在取材はお断りしている」

J-CASTニュースが22日、兵庫県庁に齋藤氏への取材を申し込んだところ、神戸きらめき法律事務所の奥見司弁護士から回答が届いた。複数の報道機関から11月22日夕を回答期限とする質問があったとして

「時間的制約の関係から現時点で把握できている事実をお伝えすることで、各報道機関への回答に代えさせていただきます」

としている。

それによると、斎藤氏が9月末にメルチュ事務所を訪問したことは事実と認めたが、「知事選挙の準備行為としての写真撮影、ポスター作製等の打ち合わせ」のためとしている。

打ち合わせの際、広報やSNSの活用についての説明を受けたが、「SNS戦略の企画立案などについて依頼をしたというのは事実ではありません」とし、

「依頼をしたのはあくまでポスター制作等、法で認められたものであり相当な対価をお支払いしております。デザイン、色使いなどについて意見をいただくこともありましたが、あくまで当方の指示に従ったものを制作していただきました」

と説明した。

SNSで相次ぐ指摘について、「公職選挙法に抵触する事実はございません」としている。

J-CASTニュースは22日、メルチュにも取材を申し込んだが、「対応を協議中であり、現在取材はお断りしている」との回答だった。

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