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党員不適切登録の自民・田畑裕明衆院議員、社員が架空党員にされたか尋ねた社長に「党費はあなたが払ったことにして」

読売新聞 / 2024年11月24日 10時57分

 自民党の田畑裕明衆院議員(富山1区)に約100人の不適切な党員登録があった問題を巡り、党関係者に困惑が広がっている。党員名簿と党費は県連に集まるものの、厳密に誰が集めてきたかまでを県連では把握できないからだ。田畑氏が当初、関係者に説明した処理では政治資金規正法違反になる可能性が高く、田畑氏の今後の説明に注目が集まる。(川尻岳宏)

社員に総裁選の投票用紙

 「9月に10人くらいの社員に党総裁選の投票用紙が届いたんです。1家族に7~8枚とか」。富山市内のある企業の社長は自身や社員が架空の党員になっているのではないかとの疑念を強めた経緯をこう説明する。投票用紙には実在しない人物宛ての書類もあった。

 不審に思った社長は10月初旬、田畑氏に直接電話をして事情を尋ねた。すると田畑氏は架空党員の存在を認めた上で「党費はあなたが払ったことにしてほしい」と求めたという。

 社長が「本当は誰が党費を払っているのか」と問い詰めると、田畑氏は「会社からの献金を充てている」と説明。田畑氏が代表を務める政治団体「富山県第一選挙区支部」の政治資金収支報告書(2022年分)を見ると、確かに収入欄にこの企業からの献金があるが、党費名目の支出は記載がない。もし田畑氏の説明が事実ならば、政治資金規正法違反(不記載)となる。

 田畑氏は18日の記者会見で社長とのやりとりについて「臆測による見立てを話した」と釈明。党費の資金源については「調査中」を繰り返した。党富山市連の高田重信幹事長によると、田畑事務所は市連からの問い合わせに対して「ある支援者が社員を登録し、その人が亡くなった後は別の人が引き継いで払っている」と説明したという。

「本人が党費を払ったか確認できない」

 自民党の党費は一般党員が年4000円、家族党員が年2000円。田畑氏が主張する“不適切な登録の党員”が約100人いるなら、年間30万円程度が必要と推測される。これは前述の企業が支部に献金した額よりもはるかに多い。

 後援会のある幹部は「収支が大きくずれるような虚偽記載ができるとは思えない。どうやりくりしているかは田畑氏にしか分からないが、政治資金と党費は別で管理していたと考えるのが自然だ」とする。

 富山県連によると、県内の党員数は昨年末時点で2万7910人。党費は中学校区ごとにある校下支部の役員が党員の自宅を回って集金し、市町村支部や選挙区支部を通じて県連に集まる。だが「党員本人が党費を払ったかどうかまでは県連で確認できない」(県連幹部)ため、誰が党費を支払ったかは支部の代表者である田畑氏にしかわからない。

 県連はかつて党費を支払った人を明確にしようと、党本部に銀行振り込みの採用を求めたが、手数料負担や組織力低下が懸念され、実現しなかったという。

「臨時国会前に説明を」

 県連幹部は「社員の党費を社長がまとめて払ったり、家族分を父親が肩代わりしたりということはある。ただ、本人の了承なく登録したり、実在しない党員を作ったりすることは聞いたことがない」と首をかしげる。

 仮に誰かがポケットマネーで党費を支払っていたとすると、政治資金ではないため規正法には抵触しない。だが、勝手に他人の名前を使ったり、架空の人物を登録したりした点で田畑氏の道義上の責任は問われる。

 田畑氏が明快な説明ができないことについて、あるベテラン県議は「秘書の入れ替わりが激しく、継続的に経理を見ているスタッフがいないことが原因ではないか」と推察した。

 県連は23日、支部長・幹事長・事務局長会議を富山市内で開いた。県連会長の橘慶一郎・衆院議員は冒頭、「臨時国会の前にはしっかりと説明責任を果たしていただきたいという話を党本部からもしている」と明かした。衆院選総括が議題だったが田畑氏は欠席し、若手県議や職域支部長らから「何かしらの処分が必要だ」「来年の参院選は戦えない」といった意見が出たという。

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