脳のがんを患った少女、ガザの家族を思い入院先の東エルサレムで死去…両親は葬儀出席かなわず
読売新聞 / 2024年11月25日 10時0分
パレスチナ自治区ヨルダン川西岸の拠点都市ラマッラの墓地に今月、東エルサレムの病院でがんのため12歳で亡くなったガザ地区出身の少女アミーラ・サッバーフさんが埋葬された。ガザで続く戦闘のため、葬儀には両親ら親族は誰も出席できなかった。少女は亡くなる直前、「ガザに戻り、お父さんと妹に会いたい」としきりに訴えていたという。(福島利之)
ラマッラの外れにある墓地で今月12日に行われた葬儀には、サブリ・セイダム元教育相らパレスチナ自治政府関係者のほか、住民ら約100人が出席したが、両親ら親族の姿はなかった。ライラ・ガナーム知事は「私たちはアミーラさんの大家族です。一緒に祈りましょう」と呼びかけた。
脳のがんを患っていたアミーラさんは、ガザでイスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が始まる1か月前の昨年9月、イスラエルの占領下にある東エルサレムの病院に搬送され、治療を受けてきたが、今月11日に息を引き取った。
父親と妹は、ガザ南部ハンユニスでテント生活を送る。病院に付き添っていた母親イマーンさん(34)は、イスラエル当局からラマッラに行く許可が下りず、葬式に出席できなかった。「イスラエルもハマスもいいかげん、戦争を終わらせてほしい。もうたくさんよ」と訴えた。
ガザの父と妹 気遣い 放射線治療 懸命に耐えたが…
パレスチナ自治区ガザ出身で、東エルサレムの病院で亡くなったアミーラ・サッバーフさん(享年12歳)は、避難先のガザ南部ハンユニスでテント生活を送る父親のハイサムさん(43)と妹のミーナさん(7)をいつも気にかけていた。ガザが空爆されるたびに「治療をやめて、私をお父さんと妹のいるガザに帰して」と懇願したという。
アミーラさんは今月11日午後3時、東エルサレムのアウグスタ・ビクトリア病院で静かに息を引き取った。翌日、遺体を乗せた救急車が病院を出る際、母親のイマーンさん(34)は車両のドアをたたき、「私も連れて行って」と泣き叫んだ。
イスラエル当局は、ガザからの避難者の遺体をエルサレムに埋葬することを許可せず、パレスチナ自治政府が管轄するヨルダン川西岸に埋葬するしかない。イマーンさんは娘が埋葬されるラマッラへ行く申請をしたが、当局が許可しなかった。自治政府によると、ガザで昨年10月に戦闘が始まって以降、西岸に埋葬されたガザ避難者は33人だ。
ガザ市リマル地区に住んでいたアミーラさんは昨年5月、激しい頭痛を訴え、倒れた。医師に処方された鎮痛剤は効かない。別の病院で昨年8月、レントゲン検査を受け、脳のがんに侵されていることが判明した。
ガザの医療水準では手に負えず、昨年9月8日にガザから東エルサレムの病院に救急車で搬送された。同病院の心理カウンセラー、マルワ・ヘルザッラーさん(37)によると、アミーラさんは体に負担がかかる放射線治療も「お父さんと妹に会うために生きたい」と歯を食いしばって受けた。
翌10月にガザで戦闘が始まり、ガザに戻れなくなった。自宅はこの月に空爆を受け、全壊した。父と妹は、避難して無事だったが、現在は避難先のハンユニスのテントで暮らす。ハンユニスが空爆されるたびにアミーラさんは「お父さんは無事なの」「妹は怖がっていないの」とパニックになった。
母親のイマーンさんは日々、ガザに電話するが、通じないことが多い。電話がつながると、妹のミーナさんは「早くお母さんと会いたい」と泣く。イマーンさんは「爆弾が落ち、食料と水のないガザで、夫と、もう1人の娘が生きていると思うと、気が狂いそうになる。早く戦争が終わり、家族で暮らしたい」と悲痛な思いを訴えた。
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