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仮設住宅の水害リスク、かさ上げ・広域避難で備え…3~5m浸水想定の地域では「祈るしかない」の声

読売新聞 / 2024年11月25日 13時30分

 全国で水害リスクを抱える応急仮設住宅の建設候補地が少なくないことが、読売新聞の調査で明らかとなった。災害級の大雨は頻発化し、地震と水害が立て続けに起きる「複合災害」リスクは増している。石川県奥能登地方での被害を受け、自治体の危機感は高まっている。(野崎達也、柳沼晃太朗)

 候補地の3分の2が「洪水浸水想定区域」にある福井県。県の担当者は「災害リスクのある場所での建設に備え、住民にしっかり避難情報を伝達できるよう市町との連携を検討していく」と危機感を強める。

 中でも福井市は、水害リスクが高い地域だ。三つの大きな河川に囲まれ、2004年7月の「福井豪雨」では市街地の広範囲が浸水した。福井豪雨などを受けて作られた市のハザードマップでは、候補地35か所のうち18か所が「浸水1メートル以上」と想定されている。

 3~5メートル浸水するとされる候補地の一つ、「山奥公園」の近くに住む男性(84)は「ここで暮らすとなったら、大雨が降らないよう祈るしかないのでは」と不安を募らせる。

 市危機管理課の村中紳一・副課長は「リスクを織り込んで仮設を建設するか、別の手段を選ぶか。住民の要望も聞きながら対応を検討したい」と話す。

基礎を50センチ高く

 奥能登地方では、平地が限られる中、避難生活を早期解消するため洪水浸水想定区域などにも仮設住宅が建設された。その結果、9月の記録的大雨で計6団地222戸が床上浸水し、多くの被災者が再び避難所暮らしを余儀なくされている。

 浸水した仮設住宅は年内に修繕を終え、入居可能となる見通しだが、石川県は「いざという時に円滑に避難できるよう、体制を整備する」と警戒を強める。

 奥能登地方のように災害リスクのある場所に建設する事態に備え、他県の自治体も検討を進めている。

 新潟県や熊本県などは、土地や住宅の基礎の「かさ上げ」を検討。新潟県村上市では22年8月の大雨で、50センチの洪水浸水想定区域に仮設住宅を整備した際、コンクリート板を重ねて基礎を50センチ高くしたという。

 区内の7割が海面より低い「海抜ゼロメートル地帯」にある東京都江戸川区。首都直下地震に備え、仮設住宅の建設候補地23か所を確保するが、大半は大規模水害で水没する恐れがある場所にある。区の担当者は「仮設住宅の入居者も区外へスムーズに広域避難できるよう、体制を整えておく必要がある」と話す。

「みなし」も対策

 仮設住宅には民間賃貸住宅を借り上げる「みなし仮設」もあり、活用を検討する自治体が増えているが、建設型と同じく災害リスクへの備えが不可欠だ。

 大阪府は、建設候補地866か所の約半数(392か所)が洪水浸水リスクを抱える。南海トラフ地震では避難者が190万人超に膨れあがる恐れもあることから、府は約45万戸(18年時点)ある賃貸の空き家を「みなし仮設」として活用する方針だ。府の担当者は「みなし仮設についても、水害などのリスクに対し安全を十分に確保できるようにしたい」と話す。

 災害時の避難行動に詳しい広井悠・東京大教授(都市防災)は、「気候変動の影響で毎年のように大雨、洪水による被害が発生しており、大地震と水害による複合災害の可能性は決して低くない」と指摘。「地震後に大雨が降れば想定より被害が大きくなり、避難誘導や救助といった行政対応も遅れる恐れがある。そうしたリスクも含めて行政が住民に伝え、早期避難できるよう備える必要がある」と指摘する。

候補地、土砂災害警戒区域にも

 今回の調査で、仮設住宅の建設候補地が「土砂災害警戒区域」を含むかどうかも47都道府県に尋ねたところ、35道府県が把握し、候補地計1万6548か所のうち1390か所(8%)が区域内だった。

 三重県では、約600ある候補地のうち、土砂災害警戒区域の中でも著しい被害が生じる恐れがある「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」が約50か所ある。県の担当者は「候補地の災害リスク状況の調査を行い、候補地の選定方法や活用について市町と対策を考えていく」としている。

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