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岩手・花巻の富士大、ドラフトに一挙6人…動画サイトで逸材発掘や数値重視の練習で飛躍

読売新聞 / 2024年11月25日 14時30分

ドラフト会議で指名された(左から)長島、渡辺、安徳、麦谷、佐藤、坂本の各選手(10月24日、岩手県花巻市で)=永井秀典撮影

 10月のプロ野球ドラフト(新人選手選択)会議で、岩手県花巻市の富士大の6人が指名された。同じ大学で一度に受ける指名の数としては異例の多さで、安田慎太郎監督(39)の育成手腕に注目が集まっている。動画投稿サイトなどから隠れた逸材を発掘して「頑張ればプロへの道が開ける」と勧誘し、個々に合う練習方法で特長を伸ばした。(盛岡支局 小林晴紀)

 会議当日の10月24日、麦谷祐介外野手がオリックスから1位指名を受けると、安田監督は「高校時代に初めて見た麦谷を走馬灯のように思い出した」と笑顔を見せた。甲子園の舞台を踏んだ経験はないが、飛球の追い方やグラブさばきに見た才能にほれ、大学へ誘った教え子の一人だった。

 安田監督はコーチを経て2020年7月に就任。指導者として、選手個々の能力を伸ばすことを第一とすれば、チームの勝利につながると信じる。自らも地方の東北学院大(仙台市)出身で、国内外の独立リーグなどを経てプロ野球を目指したが、かなえられなかった経験や教訓があるからだ。

 現在の4年生は、就任時に初めて勧誘した世代。コロナ禍で直接会う機会は制限されたが、ソフトバンクから3位で指名された安徳駿投手については、安田監督が動画投稿サイトで高校時代の投球を見て「ボールへの指先のかかりがいい」と直感し入学を勧めた。ソフトバンクの作山和英アマスカウトチーフ補佐は「プロのスカウトに近い目線で、磨けば光る素材を発掘している。6人が指名されるのもうなずける」と安田監督の眼力を高く評価する。

 練習メニューについて、安田監督は「データに基づいた信ぴょう性が高いものを選んでいる」と語る。書籍やインターネットを参考に独学で試し、数値で結果を検証する。プロの目に留まるため、投手は球速150キロを目標にしている。体の使い方と腕の振りの連動性に課題を感じ、佐藤柳之介投手には、腕をたたむ投球方法「ショートアーム」に転向させた。球速が増して負傷も減り、広島から2位指名を受けた佐藤投手は「ポジションに関係なく、安田監督は的確に教えてくれる」と信頼する。

 キャンパスが畑や田んぼに囲まれた富士大の硬式野球部は、1965年創部。全国から集まった部員、スタッフら174人が所属し、北東北大リーグで春秋計39回の優勝を誇る。これまで山川穂高選手(ソフトバンク)や外崎修汰選手(西武)ら11人のプロを輩出した。

 過去に同じ大学で一度に5人が指名されるケースもあったが、育成枠を含めて同時に6人はまれだ。夢をかなえた麦谷外野手は「野球に打ち込める環境で花巻にも恩返しをしたかった」と言うと、安田監督は「成果が出てよかった。学生にとっての4年間を無駄にしたくない」。東北の地から選手育成の挑戦は続く。

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