大関3人の「綱取りレース」、来年佳境へ…九州場所で示した琴桜と豊昇龍の変化
読売新聞 / 2024年11月25日 18時7分
ここ数場所、脇役の存在に追いやられていた琴桜と豊昇龍の2大関が一年納めの場所でついに覚醒し、来年は大の里を含めた大関3人の「綱取りレース」が最終局面を迎えそうな情勢だ。番付大変動の予感が漂う2025年の土俵に向け、九州場所での戦いを振り返る。(編集委員 上村邦之)
大関同士による千秋楽相星決戦を館内のテレビで見つめる八角理事長(元横綱北勝海)が気の早い初夢を語り出した。「来年は大関3人が横綱に上がり、新大関も何人か誕生する。そういう一年になるんじゃないかな」。一人横綱の照ノ富士の休場が続き、今場所は3人が日替わりで結びの一番の大役を務めた。「3人が実質横綱みたいなもの」というのはあながち誇張表現ではない。「照ノ富士も忘れるなとばかりに出てきてくれれば、さらに盛り上がる」との願望は多くのファンも同じ思いだろう。
今場所、琴桜のどこが良くなったのかという質問に対し、多くの親方衆は「攻めの気持ちを前に出すようになった」と口をそろえる。「今までは相撲のうまさだけが目立っていたが、攻撃的な相撲に変わった。強い相撲になった」と評したのは、高田川審判部長(元関脇安芸乃島)。ともに千秋楽に対戦した秋場所と九州場所の豊昇龍戦を比較すると一目瞭然だ。豊昇龍の攻めに防戦一方のまま押し出された秋場所に対し、九州では下半身をどっしり構え、前に圧力をかけ続けたことで豊昇龍の足が流れた。178キロの恵まれた体を生かした取り口だった。
対する豊昇龍の相撲は今場所、叔父の元横綱朝青龍によく似てきた。強引な足技や投げなど抜群の身体能力だけに頼る取り口が影を潜め、先に攻めてから二の矢の攻撃を繰り出すから、投げもよく決まった。朝青龍が番付を駆け上がってきた頃がまさにそうだった。現役時代、朝青龍と何度も対戦した元大関千代大海の九重親方は「踏み込み、相手の中に入るスピードがいい」と成長を高く評価した。
場所前は優勝候補の本命と目された新大関の大の里は、2桁勝利に手が届かなかった。「周りも研究してきたし、空回りした」と八角理事長は総括した上で、「誰にも止められない馬力をつけてほしい。ぶつかり稽古で引き回され、膝を鍛えていけばいい」と注文をつけた。今年2度の優勝を飾った地力はやはり侮れない。初場所で綱取りに挑む先輩大関にとっても壁になるのは間違いない。
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