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中国無差別殺傷 不安を増幅させる情報統制

読売新聞 / 2024年11月27日 5時0分

 中国各地で子どもや歩行者らを標的にした殺傷事件が相次いでいる。中国社会でいったい何が起きているのか。

 無差別殺傷事件は、11月だけで3件発生したことが明らかになっている。

 広東省珠海では11日、男が車を暴走させ、35人が死亡した。16日には江蘇省無錫の専門学校で元学生の男が刃物を振るい、8人が亡くなった。湖南省常徳では19日、小学校前で車が児童らをはね、負傷者が出た。

 6月に江蘇省蘇州で日本人母子らが刃物で襲われ、9月には広東省深圳で日本人男児が刺殺される事件もあった。日本人が狙われたかどうかなど詳細な動機はいまだ明らかにされていない。

 いずれも、子どもなどの弱者や無防備な群衆が無差別に襲われている。凶悪犯罪がこれほど頻発するのは尋常ではない。

 中国のSNS上では、一連の犯行は「社会への報復」だとする指摘が出ている。景気低迷を背景に、失業や就職難などに苦しむ人が増え、一部が自暴自棄となって犯行に及んだとの見方である。

 一方、政府は多くのケースで動機を示さず、当局の統制を受ける中国メディアは事件の詳細を伝えていない。市民が投稿したSNSの動画も削除されている。

 犯罪の根底には今の中国社会への不満があるとの見方が広がり、共産党指導部への信頼が揺らぐことを恐れているのではないか。

 中国の習近平政権が危機感を強めているのは間違いない。習国家主席は珠海での事件直後、「リスクの予防に力を入れ、過激な事件の発生を防がなければならない」と、異例の重要指示を出した。

 これを受け、一部地域では、投資に失敗した人や失業者、生活に失望した人らの洗い出しが始まったという。犯罪予備軍として監視するとみられる。

 だが、これまでのようにデジタル技術を駆使して監視や情報統制を強化しても、社会に閉塞へいそく感を広げるだけで、根本的な解決にはつながらないだろう。

 再発防止や治安の回復には、問題や不満を抱えた人をサポートする仕組みや、医療・年金制度の拡充など、社会の安全網を整えることが欠かせない。

 日本人を含む外国人の間では、これでは安心して中国に行けないという懸念が高まっている。対中ビジネスや人的交流に悪影響を及ぼしかねない。せっかく再開を決めた日本人への短期訪中ビザ免除措置を無駄にしてはならない。

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