尾上松之助主演の無声映画「実録忠臣蔵」、幻の映像残したペン画…元画学生が500コマに収める
読売新聞 / 2024年11月27日 17時27分
日本初の映画スター、尾上松之助が晩年に主演した無声映画「実録忠臣蔵」(1926年、池田富保監督)の映像を、記憶だけで描き起こしたペン画が残っている。フィルムがほとんど現存しない映画の全体像が分かる貴重な記録で、忠臣蔵の作品を収集する「おもちゃ映画ミュージアム」(京都市中京区)が、活動弁士付きで紙芝居形式の上映会を12月8日に同志社大(上京区)で開催する。(岩崎祐也)
実録忠臣蔵は約200分のモノクロ。松之助が大石内蔵助を演じ、江戸城松の廊下の刃傷事件や、吉良邸の討ち入りなどを撮影した。家庭向けの短縮版が流通しているが、当時の映画館用のフィルムはわずかしかなく、未解明な部分も多い。
ペン画は、熊本県山鹿市出身の元画学生・芹川文彰さんが、中学生だった1926年12月から3年近くかけて描いた。銀幕に映し出された場面を紙1枚に1~4コマずつ描き、全180枚、約500コマに収めた。ふきだしや動きを表現する線なども入れ、さながら漫画のような仕上がりだ。印象的な場面は1枚に大きく描き、物語の展開に合わせて白黒の濃淡をつけるなど、早熟な画才をうかがわせる。
芹川さんはその後、東京美術学校(現東京芸大)に進学したが、病気で中退。地元で絵に親しむ生活を送り、84年に73歳で亡くなった。親族の協力で熊本の地元紙記者がペン画を発見し、ミュージアムに持ち込んだ。
来月8日、紙芝居上映会
ミュージアムでは3年前に展覧会を開いたが、コロナ禍で集客が伸びず、改めて忠臣蔵に興味を持ってもらおうと、現代の活動弁士、坂本頼光さんを招いた上映会を赤穂浪士が討ち入りした12月14日の近くに企画した。
ミュージアムの太田文代さん(69)は「長編映画を無名の若者が最後まで描き切った魅力を知ってもらい、お茶の間の定番だった忠臣蔵を伝えるきっかけにしたい」と語る。映画の描き起こし画を「キネマ画」と命名し、大正から昭和の映画史を掘り起こす研究にもつなげたい考えだ。
上映会は8日午後1時から同志社大今出川キャンパス良心館で。入場無料で定員200人。専門家の解説などもある。問い合わせは同ミュージアム(075・803・0033)。
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