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エミー賞「将軍」に聖地・太秦のノウハウ…監修の映画監督・原田徹さん「ようやく世界が認めてくれた」

読売新聞 / 2024年11月27日 15時25分

「SHOGUN 将軍」の一場面=Courtesy of FX Networks

 米テレビ界最高の栄誉エミー賞で今秋、史上最多の18部門を受賞したハリウッド時代劇「SHOGUN 将軍」は、時代劇の聖地・京都太秦のノウハウが生かされ、制作された。撮影に携わり、京都を拠点にする映画監督の原田徹さん(69)が読売新聞のインタビューに応じ、「ようやく世界が認めてくれた」と語った。(西田大智)

10か月間

 原田さんは、SHOGUNの撮影で2021年8月から約10か月間、ロケ地のカナダ・バンクーバーに滞在。「テクニカル・スーパーバイザー」として、各シーンが時代劇として適切か監修した。小道具の位置や役者の動線、所作を助言し、日系人のエキストラには正座やすり足も指導した。

 太秦では、長くフリーの助監督として、旧大映京都撮影所のスタッフらが設立した「映像京都」(解散)を中心に活動。映画監督の深作欣二や五社英雄らの作品に関わり、自身もテレビ時代劇「必殺仕事人2009」など多くの作品を手がけてきた。

 SHOGUNの撮影では自らの経験が尊重されず、もどかしい思いもした。外国人スタッフはどこでもよろいを着せたがった。さらに城中で小刀しか差さない侍が大刀を差し、床の間の花入れにも花を飾ろうとした。「わびさびみたいなものが伝わらない。当初はぶつかりもした」

 一方、ハリウッド式の撮影に刺激も受けた。「大坂城を再現した大広間のセットも京都では建てられない大きさだった」と振り返る。

スケールの大きさ

 全10話の撮影後、再び1話目から足りない場面の撮り直しが始まり、滞在は予定より2か月ほど延びた。「必要な部分を撮り直すだけなら、日本では数軒だけだが、50軒の村を全部一から組む。絶対映らへんでって言うんやけど。お金のかけ方が違った」

 SHOGUNには、セットに天井を作らないなど日本の時代劇ではあり得ない演出や撮影手法も見られるが、「自分の経験は伝えられた。西洋人の目を通してはいるが、あそこまできちんとやった時代劇はなかなかない」と胸を張る。

 かつて太秦は、日本のハリウッドと称された。資金調達の問題で本格的な時代劇の撮影は難しくなっている中、鍵を握るのは海外での評価だ。「世界的な認知度が上がれば、映像作品はすぐ国境を越える。SHOGUNは時代劇に大きなチャンスをひらいてくれた」

長らく低迷、復活の兆しも

 時代劇は長らく低迷してきた。東映では、1960年代に太秦の撮影所で年間100本近くの映画を制作してきたが、ファン層の高齢化もあり、近年は10本以下に減少している。

 復活の兆しもある。8月に「侍タイムスリッパー」が単館で封切られた後、全国300館以上で拡大公開されるヒットを記録。東映京都撮影所が協力した。

 来年1月、太秦でも撮影された東映の「室町無頼」、松竹の「雪の花―ともに在りて―」が封切られる。東映京都スタジオの高橋剣取締役は「日本語で演じるコンテンツが評価され、制作陣を勇気づけた」と語る。

 戦後、ベネチア国際映画祭金獅子賞を獲得した「羅生門」(1950年)など海外の評価が国内のブームにつながった。山口記弘・立命館大映像学部教授は「SHOGUNの成功は当時と重なる。時代劇は日本の総合芸術とも言え、現代では、動画配信を中心に世界規模で展開していくだろう」と指摘する。

 ◆「SHOGUN 将軍」=英出身の作家ジェームズ・クラベルの同名小説が原作。戦国時代を舞台に、主人公は徳川家康をモデルにしている。真田広之さんが演じる武将・吉井虎永が、英国人航海士の按針(あんじん)らを家臣に取り立て、覇権を争う。動画配信サービス「ディズニープラス」の「スター」で独占配信中。京都ヒストリカ国際映画祭では、第1、2話が12月8日に京都文化博物館(京都市中京区)で無料上映される。

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