日本企業への投資を後押し、経済の好循環図る…読売333「等ウェート型」で特定企業の値動きに偏らず
読売新聞 / 2024年11月28日 5時0分
読売新聞社は来年3月、日本の株式市場の値動きを表す「読売株価指数(読売
指数=体温計
読売新聞社が作る「読売株価指数(読売333)」は、日本の株式市場の動向を示す株価指数だ。株価指数は経済の「体温計」と呼ばれ、日本の経済や景気の流れをつかむのに役立つ。
市場で株式が取引されている上場企業は、買い手と売り手の取引によって日々の株価が決まる。ただ、個別の企業の株価だけでは、市場全体の動向を把握できない。そこで手がかりとなるのが株価指数だ。
株価指数は、指数ごとに対象企業をひとまとめにして値動きを表している。それぞれの指数によって、対象企業や算出方法が異なる。どの指数が最も正しいということはなく、指数ごとにそれぞれの観点から市場を捉えたものだ。
読売333は、東京証券取引所を中心とする国内取引所に上場する全企業のうち333社で構成する。
まず、売買のしやすさ(流動性)という観点から「売買代金」で絞り込み、その中から「浮動株時価総額」の上位333銘柄を採用する。
株式時価総額は企業の市場価値を表し、その企業の株価と発行済み株式数を掛けて算出される。浮動株時価総額は、株式時価総額から大株主が持つ株式(固定株)分を差し引いた「浮動株」の時価総額を表す。浮動株が少ない銘柄は、市場で取引される株式数が少なく、株価が乱高下しやすいことなどから、投資しにくいとされている。
平均的な値動き
読売333の最大の特徴は、算出方法に「等ウェート型」を用いることだ。構成する333銘柄の値動きの比率を等しく取り入れて1日1回算出する。原則的に、333銘柄それぞれの株価の増減率を足して、333で割って計算する。単位は「円」のため、値動きがわかりやすい。銘柄の入れ替えは年1回、各銘柄の構成比率の調整は3か月に1回を予定する。
海外で例がある等ウェート型の指数は、日本ではまだ普及していないが、巨大な企業や特定の企業の値動きに偏らず、日本を代表する企業の平均的な値動きを表すことができる。
算出は、野村ホールディングス傘下の野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティングが行う。
国内の主な指数としては、東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価(225種)が知られる。
TOPIXは、旧東証1部上場の約2100社で構成している。算出方法は「時価総額加重型」で、時価総額が大きい企業の値動きが反映されやすい。日本経済の一つの姿を示している一方、指数の構成比率の過半を、トヨタ自動車など上位50銘柄で占めている。
日経平均は、プライム上場企業から業種のバランスをとった225銘柄で構成し、歴史と知名度から世間に広く浸透している。算出方法は「株価平均型」で、1株あたりの株価が高い企業の値動きが大きく影響する。指数の構成比率は、最も高いファーストリテイリングだけで全体の約11%を占める。上位10銘柄で40%超に上るため、上位銘柄の値動きに左右されやすい。
一方、等ウェート型を採用する読売333は、時価総額の大きい企業などに偏ることなく、構成する銘柄の値動きが均等に反映される。将来的な成長の余力がある企業の動きを取り込める特徴があり、中長期的に高いパフォーマンスも期待される。日本経済の新たな側面を伝える有益な新指標になることを目指す。
国民の資産形成を支援
読売新聞社が「読売株価指数(読売333)」を手がけるのは、日本企業の成長と国民の資産形成を支援するためだ。
国内では、20年以上前から「貯蓄から投資へ」が叫ばれ、政府も後押ししてきたが遅々として進んでこなかった。現在、約2200兆円に上る家計の金融資産のうち、現金・預金が約半分を占めている。資産運用が浸透する米国では現預金の割合は1割にすぎず、欧州でも3割程度だ。
政府は、「資産運用立国」を政策の柱に据え、今年から新NISAを導入した。だが、新NISAの新規口座開設数や買い付け額の伸びは、年初に急増して以降は減速している。また、人気の投資先は米国株指数や世界株指数の投資信託だ。
投資を受けた企業が成長し、その果実が国民に還元されて新たな投資や消費に向かう「経済の好循環」を着実に回す必要がある。現状は投資資金が海外に流出しているほか、国内では特定の人気銘柄などに集中し、幅広い国内企業には向かっていない。
読売333は、日本の株式市場に新たな視点を提供する。最大の特徴は「等ウェート型」の算出方法で、幅広い日本企業の成長を指数に反映させる。資産運用の王道である「長期・積み立て・分散」にも適応している。
アメリカの指数、圧倒的知名度
世界の株価指数の中では、最大の経済大国である米国の株価指数が圧倒的な知名度を持ち、影響力も大きい。日本を含む世界の株価指数は、米国の値動きに左右されることが多い。
米国の主要3指数が最もよく知られており、史上最高値を更新するなど総じて堅調だ。ダウ平均株価(30種)は、各業種を代表する企業30社で構成する。時価総額で世界トップクラスの米IT大手アップルやマイクロソフトを採用しているほか、今年はアマゾン・ドット・コムや米半導体大手エヌビディアを加えた。
ナスダック総合指数は、IT企業が多いナスダック市場の全上場企業から算出されており、半導体やハイテク関連株の値動きに左右されやすい。S&P500は米主要約500社で構成し、米市場全体の動向をおおむね反映している。
欧州では、ストックス欧州600が流動性の高い銘柄で構成され、欧州経済の指標となっている。各国の指数ではドイツのDAXや、英国のFTSEなども知名度がある。
世界全体を表す指数では、米MSCI社の世界の約2700社で構成する「オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」が普及している。
世界の株価指数の算出方法は、「時価総額加重型」が主流だ。歴史が長いダウ平均は、日経平均株価(225種)と同じ「株価平均型」を採用している。海外での等ウェート型指数は、S&P500等ウェート指数がある。S&P500と同じ銘柄が等ウェート型で算出されている。
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