転職エージェントが「退職代行」をすすめない理由 「もし出戻りしたくなってもできなくなる」
J-CASTニュース / 2024年11月28日 12時10分
過去に所属していた企業とはつながりを持ちたい?
退職代行を利用して、後ろ足で砂をかけるように会社を辞める人が増えている。その一方で、退職後もアルムナイ(中途退職者)として、会社との関係を良好に維持したいと考える人たちも少なからずいるようだ。
退職者を対象としたある調査によると、自身が過去に所属していた企業とのつながりを持ちたいか尋ねたところ、20代では「非常にそう思う」と答えた人が7%、「そう思う」が52%で、あわせて約6割もの人がつながりを希望していたという。
退職してみて「初めて前職のよさを知る」
この調査は、人事系SaaSを提供するハッカズークが、従業員100人以上の企業に所属していた転職経験のある正社員286人から回答を得たもの。
企業とのつながりを希望する人の割合は、30代では「非常にそう思う」が15%と20代を上回り、「そう思う」の38%と合わせると53%と、やはり過半数に達している。40代では「非常にそう思う」と「そう思う」の合計が40%、50代では同30%と年代が進むごとに減っていき、若手世代の積極性が目立つ。
一方で、つながりを持ちたいと「まったくそう思わない」と答えた人は、20代でも22%を占めており、退職後に企業と関係を維持したくないと強く考えている人も一定数いる。
この結果について、転職エージェントでの勤務経験を持つAさんは、自身が出会った人材の考え方とほぼ一致していると納得している。
「20代から30代前半の退職者は、元所属企業への思いが二極化しています。絶対に関わりたくないという人もいる一方で、割合としてはつながりを持ちたいと考えている人はかなり多い印象です。あわよくば『出戻り転職』をしたいと考える人も結構います。退職してみて、初めて前職のよさを知ることになるみたいですよ」
とはいえ、一度も転職せずに不満を募らせてくすぶっているよりも、一度外に出てみること自体は悪くないというのが、Aさんの意見だ。
「元いた会社を外から眺めることで、良さも悪さも客観的に見られるようになったということでしょう。とはいえ、転職前に気づければ、そっちの方がいいのかな、と思う人もたくさんいます。なので私たちも、転職先ですぐに辞められると困ることもあり、辞めない方がいいと思ったら率直にそうお伝えするようにしています」
新設されたプロジェクトに呼ばれる場合も
Aさんが指摘する通り、前述の調査でも「あわよくば出戻り」という人は意外と多いという結果が出ている。元所属企業とのつながりを希望する回答者に、期待する内容を尋ねたところ「元所属企業からの求人や業務委託情報の発信」が全世代で最多となった。
特に20代では65%と非常に高く、30代では32%、40代では39%、50代では29%に。元社員として業務委託で仕事を請け負ったり、場合によっては「出戻り転職」をしたいと考える人は、若い世代ほど多い。
再入社の意向については、20代では「積極的に再入社したい」が19%、「条件が合えば再入社したい」が41%で、あわせて6割にのぼった。しかし、30代では「積極的に」「条件が合えば」を合わせて36%、40代では同42%、50代では同22%と多くない。
どのような理由で再入社したいか。理由を尋ねたところ、20代では「新設された部署やプロジェクトに携わりたいから」と「退職時より昇給・昇格が見込めるから」がそれぞれ23%、「一度外に出て学んだ経験を活かして活躍できそうだから」が20%となっている。
30代と40代では「一度外に出て学んだ経験を活かして活躍」が最も多く、30代では22%、40代では26%を占めた。50代では「社内の人間関係や仕事内容などを理解できているから」が最多で31%だった。
この点についてAさんは、リファラル(人づての紹介)で若手のアルムナイに声をかけるケースは増えていると明かす。
「いまどこの会社でも、経営戦略で事業ポートフォリオの変革を掲げ、既存事業の生産性向上や新規事業の立ち上げをやりたがっています。しかし、既存の社員だけではノウハウが足りずに進められない場合が多い。そのときに、どうしても社外から経験者採用をする必要があるわけですが、もし会社の内情や課題を理解している元社員が社外で経験を積んでいたら、ぜひ出戻りしてほしいと思うでしょうね」
再入社のために重要なのは「円満退職」
なお、前述の調査では「積極的に再入社したい」と答えた人でも「とても抵抗感がある」が33%、「抵抗感がある」が43%で、合わせて76%にものぼる。
再入社の選考を受ける際に感じる抵抗感の内容を尋ねたところ、「再入社後の社員からの見られ方」が43.7%と最も多く、次いで「現所属企業よりよくない待遇」が29.4%、「選考に落選する可能性」が24.2%となっている。
Aさんは「出戻り転職」の是非は、在職中の働きぶりや辞めるときの態度が大きく影響しており、万が一の場合に備えて「きれいに辞めること」の重要性を訴える。
「退職時に上司や同僚にきちんとあいさつをして、円満に退職し、社員や元社員との交流を維持できている人であれば、退職後も仕事をもらえたり、空きポストができたときに声をかけてもらえるんですよ。退職代行なんか使ったら、出戻りなんてもってのほかですからね。私は利用をおすすめしません」
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