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トランプ政権のウクライナ和平案、暫定的に休戦ライン引く「朝鮮半島方式」に似た案浮上…双方に大幅な妥協が必要か

読売新聞 / 2024年11月29日 7時5分

 米国のトランプ次期大統領は27日、新設するウクライナ特使として元陸軍中将のキース・ケロッグ氏を起用すると発表した。ロシアによるウクライナ侵略をめぐり、ケロッグ氏は両国の合意成立時点の戦線で停戦する案を提唱している。トランプ政権の和平案は、暫定的に休戦ラインを引く「朝鮮半島方式」に似た案になる可能性が指摘されている。

 トランプ氏は27日、ケロッグ氏について、「軍とビジネスでめざましいキャリアを築いた」とSNSで激賞した。「彼はずっと私と行動を共にしてきた」とし、自身に近い人物であることを強調した。

 ケロッグ氏は、第1次政権(2017~21年)でペンス副大統領の安全保障担当補佐官だった。現在はトランプ氏に近い政策研究機関「米国第一政策研究所」で安全保障チームの共同議長を務める。今年4月には〈1〉和平合意後、ロシアにそれ以上の侵攻をさせない〈2〉和平協議参加をウクライナへの防衛強化の条件とする〈3〉ロシアを協議に参加させるため、ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟を長期間延期する――などの提言を発表した。

 米紙によると、トランプ氏陣営では次期副大統領のJ・D・バンス上院議員も9月、ウクライナの露占領地内に「非武装地帯」(DMZ)を設置し、戦闘を停止させる案に言及した。

 朝鮮戦争(1950~53年)では最初の1年は激しい戦闘が行われたが、その後は戦線が動かない膠着こうちゃく状態に陥った。核保有国間の緊張激化を恐れた米国とソ連が休戦に向けた協議を51年に開始した。約2年後の53年7月に、北緯38度線付近の軍事境界線を引き、DMZを設置する休戦協定が締結された。

 ケロッグ氏やバンス氏らの主張は、朝鮮戦争が休戦に至った方式に似た部分があると指摘される。

 ただ、戦線の「凍結」はロシアとウクライナの双方にとって大幅な妥協が必要となり、受け入れは困難が予想される。

 ロシア通信によると、セルゲイ・リャプコフ露外務次官は28日、停戦交渉を行う条件として、「プーチン大統領による提案を認めること」を米欧やウクライナに求めた。プーチン氏は、ロシアが一方的に併合したウクライナ東・南部4州からのウクライナ軍の完全撤退、ウクライナのNATO加盟断念を求めている。

 一方、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は今月の米FOXニュースのインタビューで、露占領下にある南部クリミアについて「外交的に取り戻す準備がある」と述べた。従来の「全領土の奪還」の主張から態度を軟化させてはいるが、「停戦はロシアに再軍備の時間を与えるだけだ」とプーチン氏への不信感を繰り返し強調している。

 仮に停戦が実現してもロシアに「再侵攻」の準備期間を与えるとの見方も根強く、間もなく開始から3年となる戦闘の行方は不透明なままだ。

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