金属ケーブル盗 不正な流通を防ぐ仕組みに
読売新聞 / 2024年12月1日 5時0分
太陽光発電の施設で送電用金属ケーブルの盗難被害が相次いでいる。摘発を強化して事件の発生を食い止めると同時に、盗品を流通させない仕組み作りを急ぐべきだ。
金属ケーブル盗は、昨年8900件発生し、被害額は100億円を超えた。目立つのは太陽光発電施設の被害で、今年は昨年を上回るペースで事件が起きている。
ソーラーパネルには送電用のケーブルとして主に銅線が使われている。銅は値段が高く、窃盗グループは、これを特殊カッターで切断して持ち去っている。施設は山間部など人目につきにくい場所にあるため、標的となりやすい。
盗まれたケーブルは、金属くずの買い取り業者に持ち込まれ、スクラップされて再び流通しているとみられる。近年の金属価格の高騰を受け、違法な取引が活発化しているのだろう。
警視庁などは、盗品の銅線ケーブルを違法に買い取った疑いで業者4社を一斉捜索した。太陽光発電施設は全国にある。今のところ被害は関東地方に多いが、今後、広域化する懸念は拭えない。
窃盗団のメンバーはカンボジア人やタイ人などの外国人が多く、SNSで知り合ったケースもあるという。警察は、窃盗犯と買い取り業者とのつながりや、盗品の流通経路を解明してほしい。
送電ケーブルの窃盗事件は、太陽光発電施設以外でも起きている。群馬県の県立公園は、盗難による停電で臨時閉園に追い込まれた。空調設備が止まり、多数の鶏が死んだ養鶏場もある。
側溝用の金属の蓋や、列車の線路に設置された銅製の部品なども各地で盗まれている。影響は市民生活にも及んでおり深刻だ。
一部の施設では、ケーブルの素材を銅より安価なアルミに切り替える動きがある。また、防犯カメラを設置することも有効だろう。それぞれの施設で、盗難防止対策に取り組んでもらいたい。
盗品の金属を売却しにくくすることで、盗難そのものを減らす手立ても考える必要がある。
古物営業法は、盗品の流通を防ぐため、古物商に売買相手の本人確認を義務づけている。しかし、切断されたケーブルは「古物」ではなく「金属くず」として扱われ、対象外となっている。
そのため、千葉県や茨城県は条例で、金属を扱う業者を許可制とするなどのルールを設けた。警察庁も規制を検討中だ。太陽光発電は国が推進している。盗難対策の法整備も国が主導すべきだ。
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