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ビール市場シェア拡大へ「プレモルがあってサントリー生があって金麦があることを強みに」…サントリー・鳥井信宏社長

読売新聞 / 2024年12月4日 13時34分

サントリーの鳥井氏

 国内酒類事業を手がけるサントリーの鳥井信宏社長が読売新聞のインタビューに応じた。ウイスキーやワイン、蒸留酒で強いサントリーが悲願のビール市場シェア(占有率)拡大を進めている。コロナ禍を経て、消費者の好みが変わる中で、戦略を聞いた。(聞き手・貝塚麟太郎)

狭義のビールも新ジャンルも善戦

 ――2024年10月の酒税改正から1年。狭義のビールで取り組みの成果をどう評価するか。

 「当社は狭義のビールの比率が他社よりも低いので、トータルで見れば、(酒税改正は)有利ではない。だが、狭義のビールも新ジャンル(第3のビール)も善戦している。プレモルがあってサントリー生があって、金麦があって、それぞれのパフォーマンスが他社に比べていい。

 サントリー生は飲んだ時の香ばしさがあって、これまでと違う味だった。こういうモノが作れるのだと感激した。プレモルとの違いが出せたというのは大英断だったと思う。もう一踏ん張り販売に知恵を絞りたい。

 (アサヒビールの)スーパードライと金麦はブランド認知が高く、手にとってもらいやすい商品だと思う。さから、コンビニでも指名買いが起こる。(サントリー生を)そこまで育てるためにどうするか。

 当社が一番得意なのは、業務用から家庭用。飲食店から缶のユーザーへというのが得意技なので、飲食店の取り扱いを増やせば、(業務用の)樽生を置いている店のエリアのコンビニで売れる。だから、飲食店はもう少しやっていきたい。

 ただ、瓶ビールは市場が縮小しているし、収益も厳しい。その中で瓶を出す決断をした。その結果、業務用の流通の方々から評価を頂いている。キリンやアサヒ、サッポロを置いている店にサントリーが入れれば、客との接点は広がる。愚直にやっていきたい」

 ――金麦に代表される第3のビールや発泡酒は。

 「やっぱり需要が堅い。今でも値段の差がある。流通の方からは、ビール回帰だといわれてビールに力を入れたが、売り上げが伸びなかったと言われた。第3のビールもちゃんとやらないとトータルの売り上げが伸びない。

 何やりますかって、そら金麦をやるのが一番じゃないですかという感じで、ご理解頂いた。(流通と)ウィンウィンで動き始めている。(プレモルがあってサントリー生があって金麦があることを)強みにしなければいけない」

 ――ビール市場のシェアをどう考えているか。

 「シェアをどう考えるかというよりも、ビール類が本数ベースでは圧倒的に大きい。その市場で認められていないということは、消費者との接点も少ないということだ。そうしなければ、サントリーがお酒で一番だとは思ってもらえない。

 ウイスキーがあってワインがあって、アルコール換算ベースでいけば、もしかしたらトップのシェアになっているかもしれない。でも、お客様からすればそればわからない話だ。

 だから、コーポレートブランドとプロダクトブランドでも、お酒と言えばサントリーというようになれるように頑張らないといけない。ビールの接点は圧倒的に大きいので、プレゼンスを高めたい。2030年をめどにビール市場で25%のシェアを目指す」

業務用に強み、トータルで勝負

 ――消費者の節約志向が強まっている。

 「どんなカテゴリーシフトが起きるかを考えなければいけない。コロナで一番ダメージを受けたのが飲料だというのはショッキングなことだ。お酒を飲む場所が変わり、外で飲まない分、家で飲むようになった。だからあまり落ち込みはなかったはずだ。

 飲料の需要は蒸発した。在宅していると、自動販売機の売り上げはゼロになる。適正飲酒も言われているがやっぱりお酒なしというのは考えにくい。飲み方が変わる可能性はある。月2回、外で飲んでいた人が1回になるかもしれないが、当社の強みはトータルなポートフォリオにある。

 ウイスキーのシェアもあり、ジンにも挑戦している。業務用が強いので、トータルで勝負する。10年前に米蒸留酒メーカーのビームを買収して、ジムビームもある」

 ――サントリーはハイボールブームを作った。ウイスキーの今後について。

 「今後もブームは続くし、続けなければいけない。当社はもともとウイスキーには高いシェアがあってビールが低かったので、ビールを売らなければいけなかった。ビールの売り方はどっと並べて売る。ウイスキーはそんなもんじゃないやろということで、やり方を変えた。

 ウイスキーは品質が大事だ、こんな味だということをやり始めた。エントリーにはジムビームがいい。トリスも角瓶もある。手応えがあるティーチャーズというスコッチもある。丁寧にマーケティングをしていけば、トレンドは落ちないと思う。

 (エントリー層の裾野は)広がっている。ただ、マーケティングを止めたらちょっと足踏みしてしまったので、もう一回やり直そうという話をしている。(原酒不足で)生産が追いつかないと思われがちだが、去年よりも今年、来年、再来年と増えてきている。

 転売ヤーもいて、価格高騰が話題になっているが、それでも生産は増やしている。高級品は値上げもさせてもらった。売れなくなるかと思ったら、そんなことにはなっていない。

 女性にもっとウイスキーの楽しさを知ってもらえば、市場はまだ広がる可能性がある。若者へのアプローチもテレビだけではなく、イベントやSNSなどを使って考えていきたい」

 ――若者の酒離れをどう考えるか。

 「若者が飲みに行くのが嫌かといえば、若者向け酒場もあったりする。旧態依然のマーケティングをやってきたのが問題なのではないか。ビール会社がテレビでCMを流しても、若者はテレビを見ない。アプローチの仕方を丁寧にする。再三再四言うが、お酒って悪者じゃない。適正飲酒はコミュニケーションも図れるし、丁寧に伝えていきたい」

 ――創業家への大政奉還、ホールディングス社長就任についてどう考えるか。

 「聞き飽きた。何が起こるかだれにもわからない。私がやりたいかどうかではなく、グループ従業員4万人がどう思っているかだと思う」

◆鳥井信宏(とりい・のぶひろ)氏 1991年米ブランダイス大院修了、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)入行。97年サントリー入社。高価格帯ビールの戦略担当部長やサントリー食品インターナショナル社長などを歴任し、2022年7月から社長。サントリーホールディングス代表取締役副社長も務める。サントリー創業者鳥井信治郎氏のひ孫で、元社長鳥井信一郎氏の長男。大阪府出身。

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