トランプ新政権がICCに制裁の可能性、赤根智子所長「テロ組織であるかのように脅迫される」
読売新聞 / 2024年12月2日 21時37分
個人の戦争犯罪を追及する国際刑事裁判所(ICC、オランダ・ハーグ)の加盟国年次総会が2日、ハーグで始まった。ウクライナへの侵略やパレスチナ紛争に関して、ICCが逮捕状を出したロシアとイスラエル両首脳の身柄拘束に非協力的な姿勢を示す加盟国が増えており、「法の支配」のあり方を巡って議論の紛糾が予想される。
総会は7日までで、日本を含む124か国・地域の代表が出席した。米国やロシア、イスラエルは非加盟国だ。ICCの赤根智子所長は冒頭、「国際法と国際司法は今、危機に面している。加盟国は法的な義務を果たす必要がある」と演説した。
ICCの運営や結束を協議する総会で、ICC所長が危機を訴えるのは異例だ。加盟国はICCが逮捕状を発行した容疑者の身柄拘束に協力する義務があるが、メキシコやブラジルは今年、式典や国際会議の招待状をロシアのプーチン大統領に送り、モンゴルは9月にプーチン氏の訪問を受け入れた。
プーチン氏の逮捕状発行への全面支持を表明した米国は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相への逮捕状を巡りICCの判断を批判する。トランプ新政権はICCに制裁を科す可能性もあり、赤根氏は「国連安全保障理事会の常任理事国から、(ICCが)テロ組織であるかのように脅迫されている」と非難した。
政治状況で対応を変える「二重基準」は欧州でも広がっている。逮捕状の発行直後はICCを支持するとしていたフランスは、11月27日の外務省声明で「(イスラエルなどの)ICC非加盟国に対する免責は、ネタニヤフ氏に適用される」とイスラエル擁護姿勢を鮮明にした。レバノン情勢に関与することを優先させ、ネタニヤフ氏との関係悪化を避けたとみられる。英国やオランダなども拘束に慎重な姿勢に転じ、ICCへの協力を表明する北欧や中東、アフリカ諸国が会議で反発するのは必至だ。
今回の総会では、ICC地域事務所の日本設置案も承認される予定だったが、足並みの乱れから承認は持ち越しになるとみられる。
(ブリュッセル支局 酒井圭吾 パリ支局 梁田真樹子)
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