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苦しむ日産、内田体制5年で株価は半減…HVの投入もできず幹部「売れる車がない」

読売新聞 / 2024年12月3日 6時30分

 日産自動車の内田誠社長は今月、就任から5年の節目を迎えた。「売れるクルマ」を投入できずに販売台数は減少し、5年間で株価はほぼ半減するなど苦境が続き、大規模リストラの実施に追い込まれた。足元ではアクティビスト(もの言う株主)による日産株の保有といった難題も重なる。再建に向けた道筋はいまだ見えない。(向山拓)

甘い計画

「ハードルの高い計画を推し進め、急速に業績が低下した。できないことをできると言わせてしまう文化をつくりあげた」

 内田氏は2019年12月の就任会見で強調し、実質20年近く日産トップに君臨したカルロス・ゴーン被告や西川広人前社長との決別を強調した。ただ、20年3月期連結決算の最終利益は7000億円近い赤字に転落。コロナ禍もあり、21年3月期も約4500億円の最終赤字となった。24年3月期には4000億円の最終黒字を確保し、業績は回復したかのように思われた。

 しかし、日産が先月発表した24年9月中間連結決算は一転、最終黒字が192億円と前年同期比9割減となった。記者会見で要因を問われた内田氏は、「結果論だが販売計画が大きめになっていた」と釈明した。世界販売台数は就任当初の約500万台から340万台まで落ち込んでいる。

 日産の現状について、大手銀幹部は「5年前と何も変わっていない」とこぼす。市場の見方も厳しい。日産株の2日の終値は360円で、就任時から5割近く落ち込んだ。この間、トヨタ自動車株は7割伸びた。

減産

 苦境の原因は「売れる車がない」(幹部)ことだ。米国で電気自動車(EV)に代わって人気となっているハイブリッド車(HV)を投入できていない。

 中国や欧州では低価格を売りにする中国勢の販売攻勢にあえぐ。在庫を減らすために販売奨励金を積み増す悪循環に陥っている。

 日産は11月、当面の「止血策」として世界で計9000人の人員削減を公表。生産能力は2割減の400万台とする。タイの生産拠点を一部集約させるほか、米国では前年と比べて2割程度生産を減らしている。欧州の販売落ち込みも厳しく、英国工場も同規模の減産に踏み切っている。

 社内の風通しの悪さを指摘する声もある。長年君臨したゴーン被告時代にトップからの指示を待つ姿勢が深く根付き、現在も「社長に意見を言えない」(幹部)という。日産は、来春までに経営体制を刷新する方針だ。日産関係者によると、次世代から後継者候補を探す動きがあるものの、難航しているという。

 足元の懸念材料も増えている。日産が11月に公表した半期報告書で、旧村上ファンド出身者が設立した投資ファンドが大株主となったことが判明した。ホンダと進める提携検討の足かせとなる可能性もある。

 内田氏は20年2月、就任直後の臨時株主総会で、業績改善できない場合は「クビにしてください」と訴えていた。信頼を再び取り戻す一手が求められるが、残された時間は少ない。

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