ペリリュー島に日本兵1000人埋葬地、8日から遺骨収集へ…終戦78年の昨年に密林で発見
読売新聞 / 2024年12月3日 17時40分
太平洋戦争の激戦地・パラオのペリリュー島で、米軍が日本兵の遺体を埋めた集団埋葬地が確認され、厚生労働省は8日から現地で本格的な遺骨収集に乗り出す。米側の資料に1086人を埋葬したとの記録があり、1000人規模の埋葬地からの遺骨収集は極めて異例だ。元兵士の遺族らは、遺骨の帰還に期待を寄せる。(波多江一郎、水戸支局 大井雅之)
同島の集団埋葬地を巡っては、駐留していた水戸歩兵第二連隊の戦友や遺族でつくる慰霊会が2013年、米カリフォルニア州にある「米海軍設営隊博物館」に保管されていた地図を入手し、同省に提供。その後の同省の調査で、1086人を埋葬したとする米軍資料などが見つかった。
これらの情報に基づき、同省から事業者として指定された「日本戦没者遺骨収集推進協会」(東京)が調査を始め、昨年7月から現地で10か所以上を試掘。同10月、島中央部の密林で、30メートル四方を等間隔で囲うように鉄くいが打たれている一帯を見つけた。
木々を伐採して地面を60センチ掘り返したところ、今年5月に2柱、9月に5柱の遺骨が見つかった。うち3柱はそれぞれ担架に乗せられた状態で、全身の骨が残っていた。
同協会の担当者は「周囲は自動車の残骸などが投棄されていたが、鉄くいの内側にはなかった。特別な空間で埋葬地だと確信した」と語る。同省は、遺骨がきちんと並べられていたことなどから、資料上の集団埋葬地にあたると判断した。
日本兵約1万人が戦死した同島では、いまだ約2400柱が眠る。同省などは現地に24人の調査団を送り込み、今月8日から本格的な収集を行う。
同省は来年度、パラオでの遺骨収集に関する予算を9300万円に倍増させる方針で、担当者は「戦後80年を前に遺骨収集の体制を強化していく」と話す。
同島に日本兵の集団埋葬地があることを示す資料の存在は、読売新聞が15年2月に報道していた。
収容数減少 112万柱未帰還
戦争が終結してから80年近くの歳月が流れ、収容される遺骨は減っている。
厚生労働省によると、海外(沖縄、硫黄島を含む)で戦没した日本人は240万人で、今年9月末現在、112万3000柱が未帰還だ。このうち30万柱は、沈没した艦船などと海底に眠り、23万柱は相手国の事情により収容が困難。政府は残る59万柱を中心に、調査や収集を進めている。
国の遺骨収集事業は1952年度に始まり、2016年成立の「戦没者遺骨収集推進法」は、収集を国の責務と定めた。
しかし、14年度に1411柱だった収容数は、23年度は139柱まで落ち込んだ。遺骨の風化が進み、埋葬地を知る関係者も減っているためだ。
遺骨収集事業に詳しい浜井和史・帝京大教授は「戦争の記憶を引き継ぎ、その惨禍に向き合うためにも、遺骨収容の重要性は増している」と指摘する。「できるだけ多く遺族に返すためには、DNA鑑定など科学的知見を駆使することが不可欠だ」と語る。
「遺骨ふるさとに」遺族願う
ペリリュー島の戦没者を追悼する慰霊祭が11月23日、茨城県護国神社(水戸市)で営まれ、遺族ら約50人が参列した。
大叔父が戦死した福島県南相馬市の原田敏さん(43)は、母・静枝さん(73)らと黙とうをささげた。祖父の弟である良男さん(享年23歳)は、歩兵第二連隊で部隊長を務めていた。その遺骨は帰っていない。
原田さんは家族から「(良男さんは)子どもの頃から黙々と勉学に励み、近所の土手で号令を練習し、兵隊を目指していた」と聞かされた。良男さんが同島に向かう前に両親へ送った手紙では、「相変わらずご奉公しておりますからご安心ください」ときちょうめんな字がつづられていた。
2010年5月、「大叔父の生きた痕跡を見つけたい」と新婚旅行で同島を訪れた。洞窟に足を踏み入れると、火炎瓶が転がっていた。「水や食料もなく、この閉ざされた空間で戦っていたのか……」。
◆ペリリュー島=西太平洋にある南北約10キロ、東西約3キロの島。1920年から日本の委任統治下に置かれ、軍事拠点となった。44年9月15日以降、米軍が4万人以上の兵力で上陸し、1万人の日本軍は洞窟を拠点に抵抗した。組織的な戦闘は同11月24日まで続き、日本軍の生存者はわずか約450人。2015年、在位中の上皇ご夫妻が慰霊のため訪問された。現在はパラオ共和国に属する。
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