物価高でも「ハレの日」の正月くらいは…おせち商戦は節約志向と高級路線に二極化
読売新聞 / 2024年12月4日 12時30分
おせち商戦が百貨店やホテルで本格化している。長引く物価高で節約志向は強いものの、「ハレの日」の正月くらいはぜいたくを楽しみたいという声もあるようだ。予算に応じて重詰めの段数を選べるようにするなど、各社の工夫がうかがえる。(向野晋)
◆初めて市場規模縮小
調査会社の富士経済(東京)によると、正月の重詰めおせち市場は2012年以降、共働きの増加や「ハレの日」需要の高まりを背景に拡大を続けてきた。
だが昨シーズンは初めて市場規模が縮小し、前年比1・5%減(843億円)となった。原材料高騰で販売価格が上がり、売れ行きが落ち込んだためだ。ただ、節約志向に一辺倒でもなく、一部の付加価値の高いおせちは伸びた。
この傾向は今年も続くとみて、各社とも「消費の二極化」を見据えた戦略を進めている。
◆価格据え置きも
大丸京都店(京都市下京区)の売れ筋は、和洋47品を組み合わせた「<京都・祇園 京彩宴>天禄」(2人前、1万1880円)。「前年から価格を据え置いた」(長谷川真之・広報担当)と、節約志向をにらんだ戦略を強調する。売れ行きは好調で、3位以内を維持しているという。
京都高島屋(同区)の「選べるおせち」は、価格や家族構成に合わせて選べる。和・洋・中華・
「銘々盛りおせちセット」(1万2960円~)は1人分の1段おせちを2客セットにした。担当の大滝諒さんは「お客さまにさっと出せて便利」と、親戚の集まりなど大人数で過ごす正月での利用を呼びかける。
◆リピーター
ホテルのおせちは「作りたて」が魅力。ホテル日航プリンセス京都(同区)は固定客が多いのが強みだ。大みそかに渡し、賞味期限も元日のみ。オンライン販売もしているが、京都市内からの電話による注文が大半だ。年配のファンに配慮し、市内限定で有料で配送も行っている。
主力の「日本料理 二段重」(約3~4人前、4万3000円)は、前年より3000円の値上げをせざるを得なかった。中埜智史・総料理長は「お客さまが楽しみにしているのは、季節感がある京都らしい味わいだ。味を落とさないために、原価の上昇分だけを上乗せしました」と明かす。
大丸の長谷川さんによると、この正月は円安で海外旅行を避け、自宅で過ごす人が多く、おせちを囲む機会が増えるというのが、「業界の一致した見方」という。百貨店もホテルもおせち市場の巻き返しに期待を寄せている。(商品価格はいずれも税込み)
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