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北海道警による「被疑者ノート」持ち出しは「違法」、捜査の在り方に苦言…原告側は「控訴を検討」

読売新聞 / 2024年12月4日 8時0分

 札幌市で2021年に起きた2歳児の監禁事件を巡り、20歳代の母親(嫌疑不十分で不起訴)に対する北海道警の捜査全般の違法性が問われた訴訟は3日、警察官による「被疑者ノート」の持ち出しのみを違法とする形で札幌地裁の1審が終了した。裁判所から捜査のあり方を全面的に否定される事態は避けられたが、捜査幹部からは「惨敗を喫してもおかしくない訴訟だった」との声が漏れた。

 「訴訟を起こす隙さえ与えない上手な取り調べ方法があったと思う。褒められる結果ではない」。ある幹部は判決後、こう語りながらため息をついた。

 留置管理の担当者が被疑者ノートを点検したり、破損箇所の補修を理由に留置場外に持ち出したりしたことのほか、黙秘を続ける母親への取調官の言動も問題視された今回の訴訟。道警内部には、原告側の全面勝訴を覚悟する声が少なくなかった。地裁が取り調べの録音・録画の記録開示を命じるという前例のない判断を下しており、実際に映像を確認した幹部陣にも「無理に自白を取ろうとしていると評価されかねない取り調べだ」との見方が広がっていたためだ。

 一方、布施雄士裁判長ら3人の裁判官は、計25時間超にわたる録音・録画の映像などを検討した結果、原告の母親側が主張するような威圧的な言動は認められないと判断。「捜査権の行使として許容される範囲を逸脱していない」とも述べた。ただ、「必ずしも適切ではない発言があった」と苦言を呈しており、この争点については薄氷の勝利だったことを示唆した。

 対する原告側の弁護団は、「一部勝訴」にとどまったことに複雑な表情だ。

 容疑者や被告が弁護人と自由に意思疎通することを目的とした被疑者ノートを巡り、その内容を捜査機関が点検したり、容疑者・被告から離れた場所に移したりすることを強く戒める判断が示された点は歓迎しつつ、取調官の言動の違法性については「控訴を検討する」と表明。弁護団の吉田康紀弁護士は、札幌市内で開いた記者会見で「ほかの捜査機関に『この程度の取り調べは許される』と誤解されかねない判決だ」と批判した。

 道警も判決後、「判決内容を精査し、対応を検討してまいります」とのコメントを発表した。

録画の重要性 新たな観点

元東京高裁部総括判事の矢村宏・北海学園大法務特任教授(刑事訴訟法)の話「録音・録画の映像から『行きすぎた捜査』が発覚するケースが相次ぐ中、今回は録音・録画が道警を救う形になった。札幌地裁が記録の提出を命じたのは、原告側と被告側の言い分を映像という客観的な証拠から判断したいと考えたからだろう。新たな観点で録音・録画の重要性を示した訴訟だったと言える」

被疑者ノートの意義 明示

山崎学・元東京高裁部総括判事の話「この日の判決は、被疑者ノートの機能と意義を明示した点でも重要な価値を持つ。原告は無理やり自白させられたわけではなく、道警もノートの中身を子細に確認してはいないが、判決は一時的にノートを留置場の外に移すだけで容疑者を萎縮いしゅくさせかねないとした。これが『黙秘権の侵害』に当たるとしたのも踏み込んだ判断で、活発な議論を呼ぶことになりそうだ」

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