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冬のボーナス、2人に1人「少なすぎる」と転職 理想の額と現実の差37万円!どうする企業?/マイナビ・朝比奈あかりさん

J-CASTニュース / 2024年12月4日 18時43分

冬のボーナス、2人に1人「少なすぎる」と転職 理想の額と現実の差37万円!どうする企業?/マイナビ・朝比奈あかりさん

転職でボーナスが上がった(写真はイメージ)

冬のボーナスが近づいてきたが、自分の支給額に満足している人がどれだけいるだろうか。

就職情報サイトのマイナビ(東京都千代田区)が2024年11月28日に発表した「2024年冬のボーナスと転職に関する調査」によると、2人に1人が「賞与が少ない」ことを理由に転職を経験している。自分が理想とする賞与額と実際の額との差が約37万円もあるからだ。

では、企業が従業員に納得感を持ってもらうには、どうしたら――。調査をまとめたマイナビの朝比奈あかりさんに聞いた。

ボーナス額が高いからといって、納得感が高いわけではない

マイナビの調査(2024年11月1日~4日)は、全国20~50代の正社員のうち調査時点の前後3か月に転職活動をしたか、始める予定の1369人が対象。

賞与が少ないことを理由に転職経験がある人は約半数(49.2%)で、転職理由となった人の賞与の平均額は30.8万円だった。

年代別では20代が「1番大きな転職理由だった」と答える割合が最も多く、20代は賞与額の少なさが転職につながる傾向があるようだ【図表1】。

今冬予想している賞与額は平均50.4万円。自分の仕事に見合う理想の賞与額は平均87.3万円となり、そのギャップは36.9万円だった【図2】。

前年もらった冬の賞与額に納得感があるかを聞くと、「納得していない」が半数以上(51.3%)。同時に、直近の評価に対して納得感があるかを聞くと、「納得していない」が6割近く(56.1%)で、この2つは統計的に強い相関関係が見られた(相関係数=0.736)。

ちなみに「相関係数」は2つのデータ間の関連性の強さを示す指標で、「1」か「-1」に近いほど相関関係が強くなり、「0」に近いほど相関関係がないと判断される。

賞与額に納得感がない理由を聞くと、「評価へのフィードバックがない」「正当に評価されていない」などの回答が目立った。一方で、納得感があると答えた人からは「上司からのフィードバックに納得感があった」「会社の業績についての説明がきちんとあった」などの声が挙がった。

「賞与の納得感」と「フィードバックの有無」の相関係数は0.504となり、フィードバックの有無が賞与の納得感に影響しているとみられる。

しかし、興味深いことに、「賞与の納得感」と「賞与額」の相関係数は0.175とほぼ無関係で、賞与額が高ければ納得感も高いというわけではない。

賞与額の水準は満たされるべきだが、それ以上に関しては、いかに従業員にフィードバックして納得してもらうかが大切のようだ【図表3】。

生活に最低限必要な水準を満たしていないボーナスが多い

J‐CASTニュースBiz編集部は、リポートをまとめたマイナビのキャリアリサーチラボ研究員の朝比奈あかりさんに話を聞いた。

――転職活動者の冬のボーナス予想と理想の額との間に約37万円もあれば、転職したくなる気持ちもわかりますが、この37万円というギャップはどこから計算されているのでしょうか。

朝比奈あかりさん 約37万円のギャップが生じる背景には、物価高や仕事の評価に対する不満が大きく影響していると考えられます。

近年の物価高騰の影響により、収入に対する意識を高まっています。実際に「冬の賞与額に物価高が考慮されると思うか」と聞くと、6割以上が「そう思わない」と回答しています。

あわせて、仕事が正当に評価されていないと感じることも大きな不満であると考えられます。調査では、過半数が「賞与額と評価に納得していない」と回答しています。

――その「賞与額」ですが、「賞与の納得感」との相関関係が0.175と、ほぼ無関係という調査結果がとても興味深かったです。しかし、これは【図1】の「賞与が少ない」ことが理由で転職した人が半数いるとか、理想額とのギャップが37万円あるとかいう話と矛盾するのではないでしょうか。

朝比奈あかりさん 「賞与の納得感」と「賞与額」の相関関係が0.175と低いことは、賞与額そのものが納得感に大きな影響を与えていないことを示しています。これは、賞与額が高いからといって必ずしも納得感が高まるわけではないということです。

しかし、注意する必要があるのは、現状の賞与額が生活に最低限必要な水準を満たしていない人がいるという点です。転職活動者のボーナスに対する理想と現実のギャップを広げているのは、「物価高」や「仕事の評価」に対する不満が影響しているのではないか、と述べさせていただきました。

現状としては、今年予想している冬の賞与額の平均額は、最低限必要な賞与額の平均に至っていません。まずは、この生活に関わる不満を解消するために、物価高騰に見合う、最低限必要な賞与額の水準が満たされるべきであると考えております。

「100万円」のボーナスでも、フィードバックを受けないと不満

――つまり、まず生活に必要な最低限のボーナスを支給されることが大前提だというわけですね。

朝比奈あかりさん この最低限の金額が満たされた場合、それ以上の金額では「仕事の評価に対する不満」の影響が強くなると考えられます。

そのため、最低限の金額が満たされている場合は、金額の高低よりもフィードバックの有無のほうが関係性は強いのではないかと推察しています。

たとえば、「賞与に対する納得感の理由」の自由回答をみると、前年もらった冬の賞与額が平均の2倍である「100万円」という人の中でも、「物価高に対する賃上げの実感がなく、同業者に比べて賞与が少ない」(男性50代/不動産・建設・設備・住宅関連)と納得感が低い人もいます。

このように、金額が高いからといって必ずしも納得感が高いわけではないことがわかります。

――「100万円」の人は、ちゃんとフィードバックされてなかったようですね。ところで、調査では若年層ほどフィードバックを受ける機会が多いからボーナス額への納得感も高いとあります。逆にいうと、ミドル層はフィードバックを受ける機会が少ないわけで、若者優遇の理不尽な印象を受けます。

朝比奈あかりさん 若者優遇というよりは、仕事を教わるキャリアの初期段階にいる人に若者が多いと考えております。

若者は、以前より仕事がどの程度できるようになっているか、成果が上げられるようになっているか、という視点で、上司からフィードバックを受けています。

一方で、経験豊富なミドル・シニア層に対しては、フィードバックを実施できる人がいない可能性も考えられます。企業側に行った調査では、フィードバック実施が「ルール化されている」ところは約半数にとどまっており、個人の裁量に任されているケースもあるようです。

個人の裁量に任されてしまうと、管理職層の負担が増え、フィードバック対象者の偏りも進んでしまいますから、企業には公平で透明性のある評価制度の構築が求められているのではないでしょうか。

転職者は賞与額だけでなく、評価やフィードバックの質も調べよう

――なるほど。企業としてはボーナスの額を増やすのが理想ですが、それが難しい場合でも、評価に関して丁寧なフィードバックを行うべきだということですね。具体的にはどうやれば納得感を得られるのでしょうか。

朝比奈あかりさん 個人の自由回答をみると、評価自体の高低によらず、自身の頑張りが反映されていたり、賞与額の計算が明確であったりすることで納得感がある、という意見が見られました。たとえば、こんなケースです。
【前年冬の賞与:20万円代】
「評価のフィードバッグで、自分が特に苦労し工夫した点が賞与の加算項目に追加された」(女性30代/不動産・建設・設備・住宅関連)

【同40万円代】
「会社の業績を反映してもらえた。フィードバックもあり、自分の良し悪しを客観的に見ることができた」(男性 40代/運輸・交通・物流)

【同50万円代】
「会社の利益に対しての額を出してもらった」(女性40代/不動産・建設・設備)

――今回の調査で特に強調しておきたいことや、転職者へのエールがありますか。

朝比奈あかりさん 特に重要なポイントは2点あります。

1点目は、賞与額が物価高に見合う金額に至っていない可能性がある、ということ。正社員の6割以上が賞与額に物価高が考慮されないと考えています。

2点目は、増額が難しい場合であっても、フィードバックを行うことで賞与の納得感を高められる可能性がある、ということ。企業側には、従業員のモチベーション向上や企業全体のパフォーマンス向上のために取り組めることとして有効なのがフィードバックです。

転職を考えている方に対しては、職場を探す際、賞与額だけでなく評価やフィードバックの質、職場環境など、総合的に納得のいく職場を見つけることが大切ではないかと考えています。自分に合った職場を見つけるために、情報収集を怠らず、慎重な選択が必要ではないでしょうか。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)



【プロフィール】
朝比奈 あかり(あさひな・あかり)
マイナビ社長室 キャリアリサーチ統括部キャリアリサーチラボ研究員

2016年中途入社、「マイナビ転職」の求人情報や採用支援ツールの制作に携わる経験を経て2020年に現職へ。
専門・研究分野:中途採用領域全般、正社員の働き方、転職と賃金の関わり、キャリア自律など。

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